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イエメン モカ・マタリのコーヒー|「モカ」の名の由来になった港と、バニーマタルの産地・味

山岳テラスが生むワインの雫

「モカ」の名は、17世紀以降に欧州の船が寄港したイエメンのモカ港に由来する。「マタリ」はバニーマタル地区のこと。15世紀のコーヒー飲用が後世の史料で伝わるイエメンの産地、山岳テラスの栽培、ナチュラル精製、ワイン・ドライフルーツ・スパイスが重なる味をまとめる


産地情報

産地イエメン・バニーマタル地区(サナア県西部山岳)
品種イエメン在来種(ウダイニー・ダワイリー・ハラジ等の地域での呼び名)
標高歴史的な栽培高度1,000〜2,000m(研究資料)
味わいデーツ・ワイン・ピスタチオ・チャイスパイス・ダークチョコ・ワイニーな酸味当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:イエメン在来種

15世紀のイエメンでコーヒーが飲まれていたことは、後世にまとめられた史料で伝わる(同時代の史料は乏しい)。査読論文(Agronomy誌、2022年)はイエメンをコーヒーの重要な栽培地域、遺伝的多様性の重要な地域として扱っている。ウダイニー・ダワイリー・ハラジなどは地域で使われる呼び名で、名称だけでは遺伝系統を特定できないことが査読論文で示されている。同論文ではイエメンのコーヒーから「New-Yemen」と呼ばれる遺伝グループが報告されている。水が極めて少ない乾燥地帯で雨水農業(テラス農法)により栽培。機械を使わない完全手作業の伝統が今も続く

  • 15世紀のコーヒー飲用が後世の史料で伝わる
  • 17世紀以降に欧州の船が寄港したモカ港の歴史
  • 水不足の乾燥地帯でのテラス農法
  • 戦争・政情不安により希少性が増している

モカ・マタリとは

モカ・マタリ(Mocha Mattari)は、イエメン・サナア県バニーマタル地区(Bani Mattar)産のコーヒーに付けられる銘品名です。 「モカ」は、17世紀以降に欧州の船が寄港した(英国東インド会社の船のモカ入港は1609年。オランダは1616年にモカで季節的な交易を行い、常設の商館を置いたのは1621年)イエメンのモカ港に由来し、「マタリ」はバニーマタル地区の名を縮めた呼称です。 ジャワ島へのコーヒーの導入については、World Coffee Research(WCR)の資料に、1696年と1699年にインドのマラバール海岸からバタヴィアへ種子が送られたと記されています。WCRは、イエメンからジャワへの直送説には異論があるとし、マラバール経由の導入を説明しています(ワーヘニンゲン大学〔WUR〕所蔵の後代の史書の本文は照合できていません)。南大西洋の孤島セント・ヘレナ島については、島のコーヒー事業者St Helena Coffeeの資料で、1733年にモカから種子が持ち込まれたと記録されており、以後290年以上にわたり独自品種として受け継がれています。

急峻な山岳テラスで、数百年前とほぼ変わらない完全手作業・伝統的ナチュラル精製で生産されます(研究資料によると、イエメンでの歴史的な栽培高度は1,000〜2,000m)。 ワイン・ドライフルーツ・スパイスが複雑に絡み合う風味が特徴です。 現在は政情不安により生産量が減少しており、希少価値がさらに高まっています。


代表的な産地

代表的な農園

  • ハラズ地区Haraz District
    🏆 Best of Yemenの公式結果にハラズ(Haraaz)由来ロットの入賞あり(例:5位・88.90点、13位・88.30点)
    📍 イエメン・サナア県(首都近郊)

    急峻なテラス農法で栽培され、ワイン・ドライフルーツの複雑な発酵感が特徴。日本のスペシャルティショップでも高い人気

  • バニー・マタル地区Bani Mattar
    📍 イエメン・サナア県(西部山岳)

    スパイシーでウッディな深みがあり、ハラズとは異なる個性を持つ。完全伝統製法による天日干しナチュラル

  • ライミ地区Raymah
    📍 イエメン・ライミ県

    チョコレートと土のような深いコクが特徴で、戦乱下でも生産を続ける農家が世界から支持を受けている


精製方法

精製方法

☀️

ナチュラル

Natural / Dry Process

1
収穫→
2
そのまま乾燥→
3
(長期間)→
4
脱穀
ボディ
4/5
クリアさ
2/5
発酵感
5/5

フルーティーで甘みが強い。ベリー系の発酵感とワインのような複雑さ


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づく編集上の目安です。特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。


おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いイエメン モカ・マタリエチオピア イルガチェフェインドネシア マンデリンG1ベトナム ロブスタタンザニア キリマンジャロブラジル サントスNo.2

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜92℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ・フレンチプレスで複雑さを引き出す
  • 豆の量:11〜13g / 200ml(11g → ドライフルーツとスパイスの繊細な複雑さ、13g → ワインのような発酵感とダークチョコのコクが深まる)

📏 基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

目的別に次に読む


訂正(2026-09-29): 副題・説明・品種欄で「人類最古の交易コーヒー」「世界最古の銘品」「15世紀から続くモカ貿易の原点」「人類の商業的コーヒー貿易の発祥地(15世紀〜)」「15世紀からの栽培歴」と記載していましたが、Cambridge University Pressの研究書とUCSCのコーヒー史資料で確認できたのは、15世紀のイエメンにコーヒー飲用の記録が残ることまでで、「世界最古」「発祥地」という順位や15世紀からの栽培・交易の開始は確認できませんでした。一次資料で確認できなかった「最古」「発祥地」の表現は削除し、「15世紀のイエメンにコーヒー飲用の記録が残る」という範囲に改めました。「『モカ』は15世紀にコーヒー貿易を担ったイエメンのモカ港」と記載していましたが、フランス文化省の資料では、モカへの英国船の寄港は1609年、オランダ商館の設置は1616年で、15世紀からの交易港とするのは早すぎました。「17世紀以降に欧州の船が寄港したモカ港」に改めました。「1699年にはこのイエメン産のアラビカ苗木がオランダ東インド会社によってジャワ島へ持ち込まれ、世界的なコーヒー栽培拡大の起点となりました」と記載していましたが、ワーヘニンゲン大学(WUR)所蔵の史料では1696年にインドのマラバールからバタヴィアへ苗が送られた記録があり、World Coffee Research(WCR)もイエメンからジャワへの直送説に異論を示してマラバール経由を説明していました。この内容に改め、一次資料で確認できなかった「世界的なコーヒー栽培拡大の起点」は削除しました。セント・ヘレナ島について「モカ港経由の苗木は1733年に」と記載していましたが、St Helena Coffee(島のコーヒー事業者)の資料では1733年にモカから「種子」が持ち込まれたとされていたため、出所を明記して改めました。標高を基本情報で「1,500〜2,500m」、本文で「1,500〜2,200m」、産地紹介でハラズ地区「2,000〜2,500m」、バニー・マタル地区「1,800〜2,300m」、ライミ地区「1,500〜2,000m」と記載していましたが、研究資料で確認できたのはイエメンでの歴史的な栽培高度1,000〜2,000mで、地区別の標高範囲は確認できませんでした。標高は研究資料の範囲に揃え、地区別の数値は一次資料で確認できなかったため削除しました。品種欄の「ウダイニー・ダワイリー・ハラジ等」について、査読論文(Agronomy誌)ではこれらは地域で使われる呼び名で、名称だけでは遺伝系統を一意に特定できないとされ、「New-Yemen」は遺伝グループとして報告されていたため、その旨を補いました。ライミ地区を「近年注目度が上がっている新興産地」とした記述は、一次資料で確認できなかったため削除しました。追加の照合で、ハラズ地区を「イエメン最高品質の産地のひとつ」「複数の国際スペシャルティ品評会で入賞」と記載していましたが、Best of Yemenの公式結果で確認できたのはハラズ(Haraaz)由来ロットの入賞(例:5位・88.90点、13位・88.30点)まででした。入賞の記述はこの結果に改め、一次資料で確認できなかった「イエメン最高品質」「複数の国際品評会」は削除しました。あわせて、ハラズの順位づけを前提にしたバニー・マタル地区の「ハラズと並ぶ高品質産地」も削除しました。「他のどの産地でも再現不能なイエメン固有の味」「唯一無二の風味」「エチオピアから持ち込まれた古代品種がイエメン固有の環境で独自進化したとされる」と記載していましたが、一次資料で確認できなかったため削除しました。査読論文(Agronomy誌、2022年)で確認できた、イエメンをコーヒーの重要な栽培地域、遺伝的多様性の重要な地域として扱っているという範囲に改めました(品種欄の「複数の古代品種群」も同じ理由で外しました)。追加の照合で、品種名を「イエメン在来種(Yemenia/New-Yemen)」と記載していましたが、査読論文(Agronomy、2022年)で「New-Yemen」は研究上の遺伝グループとして報告されたもので、「Yemenia」を正式な品種とする根拠は確認できなかったため、品種名を「イエメン在来種」に改めました。(オランダ商館の1616年の点は、2026-10-11の訂正で改めました)

訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。

訂正(2026-10-05): ジャワ島への導入について「ワーヘニンゲン大学(WUR)所蔵の史料に、1696年にインドのマラバールからバタヴィアへ苗が送られた記録があります」と記載していましたが(2026-09-29の訂正を含む)、姉妹記事ジャワ イエン高原で同日に一次資料を見直したところ、World Coffee Research(WCR)の資料で確認できたのは、1696年と1699年にインドのマラバール海岸からバタヴィアへ「種子」が送られたことで、WUR所蔵の後代の史書は本文を照合できませんでした。出典をWCRに改め、「苗」を「種子」とし、1699年の送付も併記しました。参考資料の欄のWUR所蔵史書も、本文を照合できていないと明記しました。WUR所蔵史書の本文と、送られた種子がその後どう定着したかの経緯は確認できていません。

訂正(2026-10-11): Codex による一次資料との照合(Issue #337)にもとづき、次の点を改めました。「オランダ商館の設置は1616年」と記載していましたが、Journal of Global History(Cambridge University Press)掲載の論文は、1616年の季節的な交易と常設の商館を区別し、常設の商館の設置を1621年としていたため、「オランダは1616年にモカで季節的な交易を行い、常設の商館を置いたのは1621年」に改めました。「15世紀のイエメンにはコーヒー飲用の記録が残る」と記載していましたが、確認できたのは後世にまとめられた史料が15世紀のイエメンでの飲用を伝えていることまでで、同時代の史料は乏しいとされていたため(Orientalia Suecana 75、2026年)、その範囲に改めました。


参考文献・情報ソース

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