Species — 珈琲の3原種

現在確認されているコーヒーの種は100種以上ありますが、商業的に栽培されているのは主に3つの原種です。それぞれの特徴を理解することで、豆選びの眼が変わります。

Coffea arabica

アラビカ種

世界の生産 約53%(2025/26年)

コーヒーの王様。繊細でフルーティーな酸味と甘みが特徴。高地栽培でゆっくり育つスペシャルティの主役

栽培標高1,000〜2,100m(赤道付近)
カフェイン0.6〜1.7%
病害耐性さび病に弱い

Coffea canephora

ロブスタ種

世界の生産 約47%(2025/26年)

力強く苦みが強い。病害虫・高温に強く低地でも栽培可。インスタントやエスプレッソブレンドの主原料

栽培標高100〜800m
カフェイン1.5〜3.3%
病害耐性さび病などに強い

Coffea liberica

リベリカ種

世界シェア 少ない(数値は未確認)

世界の生産に占める割合が小さい種。植物資源の資料(PROSEA)は、アラビカやロブスタより苦みが強いとする。フィリピンでは「カペン・バラコ」と呼ばれる

栽培標高低地〜約1,300m
カフェイン0.5〜1.8%
病害耐性さび病は軽い
アラビカ種Coffea arabicaロブスタ種Coffea canephoraリベリカ種Coffea liberica
原産地エチオピア高原中部アフリカ(コンゴ周辺)熱帯アフリカ(西部〜中部)
世界シェア約53%(2025/26年)約47%(2025/26年)少ない(数値は未確認)
栽培標高赤道付近で1,000〜2,100m、赤道から離れた地域で300〜1,100m100〜800m低地〜約1,300m(自生地)
カフェイン含有量
0.6〜1.7%
1.5〜3.3%
0.5〜1.8%
風味の特徴繊細・フルーティー・甘み・酸味力強い・苦み・コク・アーシー苦みが強いとされる(PROSEA)
病害虫耐性さび病に弱いさび病・コーヒーベリー病におおむね強いさび病にかかるが、ほかのコーヒーよりはるかに軽い
主な用途
スペシャルティシングルオリジン
インスタントエスプレッソベース
フィリピン国内バラコ

世界の生産は USDA FAS「Coffee: World Markets and Trade」(2026年7月)の2025/26年の推計(アラビカ9,444万袋・ロブスタ8,439万袋、60kg袋)から計算した割合です。USDA の統計はアラビカとロブスタの2区分で、リベリカを分けて示していません。栽培標高・カフェイン(乾燥した豆)・病害耐性は、植物資源の資料 PROSEA の各種の記述によります。

訂正(2026-10-14): 概要・比較表・各種の欄で、世界シェアを「アラビカ約60〜65%・ロブスタ約35〜40%」、栽培標高を「アラビカ600〜2,200m・ロブスタ0〜900m・リベリカ低〜中高度」、カフェインを「アラビカ0.8〜1.4%・ロブスタ1.7〜4.0%(約2倍)・リベリカ約1.2〜1.5%」、病害耐性を「アラビカ弱い(管理コスト高)・ロブスタ強い(栽培しやすい)・リベリカ中程度」と出典なしで記載していましたが、世界の生産は USDA FAS の2025/26年の推計(アラビカ約53%・ロブスタ約47%)と合わなかったため改め、ほかの数値と病害耐性は PROSEA の記述(栽培標高:アラビカは赤道付近で1,000〜2,100m・赤道から離れた地域で300〜1,100m、ロブスタ100〜800m、リベリカは低地〜約1,300mに自生。カフェイン:アラビカ0.6〜1.7%・ロブスタ1.5〜3.3%・リベリカ0.5〜1.8%。病害:アラビカはさび病に弱く、ロブスタはさび病・コーヒーベリー病におおむね強く、リベリカはさび病にかかるがほかのコーヒーよりはるかに軽い)に改めました。

Coffea arabica

アラビカ種

世界の生産 約53%(2025/26年)
栽培標高1,000〜2,100m(赤道付近)
カフェイン0.6〜1.7%
病害耐性さび病に弱い

コーヒーの王様とも呼ばれるアラビカ種は、エチオピアの高原地帯が原産。標高の高い涼しい環境でゆっくりと育ち、複雑で繊細な風味を持ちます。

スペシャルティコーヒーの多くはアラビカ種であり、産地・品種・精製方法による味の違いを最も楽しめる種です。一方で病害虫に弱く、栽培に手間がかかるため価格も高くなりやすいのが特徴です。

主要品種

ティピカ

アラビカの原種に近い品種。クリーンで上品な酸味。ブルーマウンテンに使われる

ブルボン

イエメンからティピカとは別の経路でブルボン島(現レユニオン)へ渡った系統。中南米の栽培品種の多くがティピカとブルボンの2系統に由来する

ゲイシャ

エチオピア原産。ジャスミン・桃のような香りで世界最高値を誇る品種

カトゥーラ

ブルボンの突然変異。収量が多く、明るい酸味が特徴。中米で主流

SL28 / SL34

ケニアのスコット農業研究所(Scott Agricultural Laboratories)が1930年代に選抜した品種

ヘイルーム(在来種)

エチオピアの野生種の総称。多様な遺伝子を持ち、多彩な風味を生む

訂正(2026-10-14): 主要品種の欄で、ブルボンを「ティピカの突然変異」、SL28・SL34を「ケニア農業研究所が選抜」「カシスのような強烈な酸味が特徴」と記載していましたが、World Coffee Researchの品種カタログでは、ブルボンはティピカとは別の経路でブルボン島へ持ち込まれた系統、SL28・SL34はスコット農業研究所(Scott Agricultural Laboratories)が1930年代に選抜した品種で、品種固有の風味の記載はないため、選抜の記録だけに改めました。あわせて、出典のない「甘みとコクのバランスが良く」を外しました。

Coffea canephora

ロブスタ種

世界の生産 約47%(2025/26年)
栽培標高100〜800m
カフェイン1.5〜3.3%
病害耐性さび病などに強い

「ロブスタ(Robusta)」はラテン語で「強健な」を意味します。病害虫や高温・低地にも強く、アラビカ種が育ちにくい地域でも栽培できます。ベトナム・ブラジル・インドネシアが主要産地です。

カフェイン含有量はアラビカより多く(PROSEA によると乾燥した豆でアラビカ0.6〜1.7%、ロブスタ1.5〜3.3%)、苦みが強いのが特徴です。主にインスタントコーヒーやエスプレッソブレンドのベースとして使われます。近年はスペシャルティロブスタとして品質向上も注目されています。

主要品種・栽培地

コニロン(ブラジル)

ブラジル産ロブスタ。カフェテリア文化を支えるブレンドの主役

ウガンダ・ロブスタ

アフリカ系ロブスタの中では風味が豊かで、単品使用も増えている

ベトナム・ロブスタ

世界最大のロブスタ産地。ベトナムコーヒー(練乳コーヒー)の主原料

Coffea liberica

リベリカ種

世界シェア 少ない(数値は未確認)
栽培標高低地〜約1,300m
カフェイン0.5〜1.8%
病害耐性さび病は軽い

熱帯アフリカの西部から中部(POWOでは熱帯西アフリカからウガンダ、アンゴラ北部まで)に自生するリベリカ種は、世界の生産に占める割合が小さい種です(2025年の学術誌『Nature Plants』の論文。具体的な割合は一次資料で確認できていません)。風味について、植物資源の資料(PROSEA)は、アラビカやロブスタより苦みが強いと説明し、砂糖やミルクを多く入れて飲まれることや、ほかのコーヒーとブレンドされることを挙げています。2025年の論文も、リベリカとエクセルサでは風味の傾向が異なるとしています。

フィリピンでは、バタンガス州・カビテ州を中心に育つリベリカが「カペン・バラコ」と呼ばれています(フィリピン・コーヒー委員会)。PROSEA によると、マレーシア(半島部・サバ州)やガイアナなどでも栽培されています。

主な栽培地・品種

カペン・バラコ(フィリピン)

フィリピンでリベリカを指す呼び名。バタンガス州・カビテ州が中心(フィリピン・コーヒー委員会)

エクセルサ

リベリカ種に近い系統。従来はリベリカ種の変種(var. dewevrei)とされ、英国キュー王立植物園のデータベース(POWO)では C. excelsa は C. dewevrei の異名。2025年の Nature Plants のゲノム研究は C. dewevrei を独立した種としており、分類はまだ定まっていない。PROSEA は、リベリカより苦みが少ないとしている

訂正(2026-10-14): リベリカ種について「世界シェア約1%未満」「西アフリカのリベリアが原産」「エクセルサはリベリカの亜種」と記載していましたが、世界の生産に占める割合の数値は一次資料で確認できず(リベリア ニンバ・ガイアナ ポメルーンの記事の訂正で削除済み)、原産地はリベリア1国ではなく西アフリカ(2025年の Nature Plants の論文ではシエラレオネ・リベリア・コートジボワール・ガーナ・ナイジェリア)、エクセルサは従来リベリカ種の変種とされ、同じ論文(ゲノム研究)では別の種(C. dewevrei)とされているため、確認できる範囲に改め、出典を加えました。同日、Codex による一次資料との照合(Issue #386)で、キュー王立植物園のデータベース(POWO)が自生地を熱帯西アフリカからウガンダ、アンゴラ北部までとしていることを確認したため、原産地を「西アフリカ」から「熱帯アフリカ(西部〜中部)」に改めました(西アフリカは、2025年の論文が分けた狭い意味のリベリカ種の分布です)。さらに同日、出典のない風味・評価の記述(「スモーキーで木質感のある独特の香り」「好き嫌いが分かれる」「木が大きく育ち、豆も大粒」「バラコとして珍重」「強い香りと力強い風味でローカルコーヒー文化を支える」「スモーキーで力強く、地元で長く愛される」、エクセルサの「タルトな酸味と複雑なフレーバー」)を外し、PROSEA と2025年の論文で確認できる記述(アラビカ・ロブスタより苦みが強い、エクセルサはリベリカより苦みが少ない、リベリカとエクセルサで風味の傾向が異なる)に改めました。

参考文献・情報ソース

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