コロンビア トリマ

FARC発祥の地が育てた、紛争後の無農薬コーヒー

コロンビア中西部トリマ県、標高1,200〜2,300m。1964年FARC発祥の地として50年紛争の中心地だったが2016年和平後にASOPEPなど17の生産者協会が誕生、無農薬に近い土壌でカスティージョ・カトゥーラを栽培し柑橘・ダークチョコの複雑なカップを生む国内第3位の産地


産地情報

産地コロンビア中西部 トリマ県(プラナダス・リオブランコ・イバゲ周辺)
品種カスティージョ・カトゥーラ・ティピカ・ブルボン・マラカトゥーラ
標高1,200〜2,300m(主要産地は1,400〜2,200m)
味わいオレンジ・洋梨などのストーンフルーツ・ダークチョコレート・キャラメル・張りのある酸味

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:カトゥーラ(Caturra)

1915〜1918年頃、ブラジル・ミナスジェライス州でブルボン種の単一遺伝子突然変異として発見され、1937年にサンパウロ州立農学研究所(IAC)が選抜・命名した矮性品種。樹高が低く密植栽培に向き、収量性の高さから1950〜60年代にかけてコロンビア・コスタリカなど中南米全域へ急速に広がった。トリマでは県内最大級の生産者協会ASOPEPが手がけるウォッシュドロットの中核品種で、標高1,400〜2,150mの畑でバニラ・キャラメル・ブラックリコリスの甘みと張りのある酸味を引き出す

  • ブルボン種の単一遺伝子突然変異、矮性で密植栽培に適する
  • 1937年にブラジルIACが選抜、1950〜60年代に中南米全域へ普及
  • トリマの生産者協会ASOPEPが手がけるウォッシュドロットの中核品種
  • 標高1,400〜2,150mでバニラ・キャラメル・ブラックリコリスの甘みが際立つ

コロンビア トリマとは

トリマ(Tolima)はコロンビア中西部、首都ボゴタから西へ約200kmに位置する内陸県。西のコルディジェラ・セントラル(中央山脈)と東のコルディジェラ・オリエンタル(東山脈)に挟まれたマグダレナ川上流の谷と山岳地形が、標高1,200〜2,300mという広い高地帯を作り出す。県内38市町村でコーヒーが栽培され、約61,800戸の生産家族が106,852ヘクタール(2024年、フェデラシオン・ナシオナル・デ・カフェテロス=FNCデータ)を耕作し、ウイラ・アンティオキアに次ぐコロンビア国内第3位のコーヒー生産県に位置づけられる。栽培面積の83.98%が技術転換(テクニフィカード)済み83%がさび病耐性を持つカスティージョ等の品種で占められる。

FARCが生まれた土地——紛争から復興へ

トリマ県南部の自治体プラナダスは1964年、コロンビア革命軍(FARC-EP)が結成された地としてコロンビアの近現代史に刻まれる。政府軍によるマルケタリア農民集落への攻撃を機に武装闘争が始まり、1990〜2013年の間だけで230件超の紛争関連事件が記録され、1985年以降プラナダス一自治体で4,579人が犠牲者として登録された。FARC-EPは2017年の武装解除まで独自の統治体制を敷き、コーヒー産地としての国際市場アクセスも長く閉ざされてきた。皮肉にも、この孤立期間が化学肥料や農薬をほとんど使わない土壌をそのまま残す結果となり、和平後の生産者たちがオーガニック栽培へ転換する土台になった。

和平後の生産者協会の台頭

2016年の政府とFARCの和平合意以降、プラナダスだけで17の小規模生産者協会が新たに設立された。それまで地域を独占していた老舗協同組合カフィスール(CAFISUR)の販売シェアは2017〜2018年の1年間で40%減少する一方、同期間の域内生産量は702トン増加した。2013年設立のASOPEP(プラナダス小規模生産者協会)はその代表格で、精製・品質管理・輸送・輸出までを自前で一貫して担う県内唯一の生産者協会に成長し、欧米のスペシャルティロースターと直接取引する体制を築いている。

カップオブエクセレンスと風味の個性

2015年のコロンビア・カップオブエクセレンスでは、トリマ産のロットが上位4位のうち3席を独占する快挙を達成した。柑橘系の張りのある酸味とミディアム〜フルボディが特徴で、ロースターのレビューではオレンジ・洋梨・ピーチといったストーンフルーツ、ダークチョコレート、焼き菓子を思わせるアロマがしばしば言及される。主要品種はカスティージョ・カトゥーラ・ティピカ・ブルボン・マラカトゥーラで、近年はゲイシャやピンクブルボンなど高付加価値品種を試験栽培するマイクロロット生産者も増えている。同じコロンビア南部の産地としては、原産地呼称(DO)を持つコロンビア ウイラがピンクブルボンを軸に赤い果実の甘酸を打ち出しており、トリマの柑橘系の酸とダークチョコレートの対比が際立つ。


代表的な生産者・農園

代表的な農園

  • ASOPEP(プラナダス小規模生産者協会)Asociación de Productores Agropecuarios de Café Especial de Planadas (ASOPEP)
    📍 コロンビア・トリマ県 プラナダス⛰️ 1,400〜2,150m

    2013年設立、275戸の小農家が加盟するトリマ最大級の生産者協会。精製・品質管理・輸送・輸出までを一貫して自前で担う県内唯一のインフラを持ち、バニラ・キャラメル・ブラックリコリスの甘みと張りのある酸を特徴とするウォッシュドロットを生産。旧来の協同組合カフィスールの寡占体制を崩し、和平後の域内生産量拡大を牽引した生産者組織のひとつ

  • MULTICOOP(トリマ多目的協同組合)Cooperativa Multiactiva de Asociaciones Agropecuarias del Tolima (MULTICOOP)
    📍 コロンビア・トリマ県 リオブランコ⛰️ 1,450〜1,850m

    300戸を超える小農家が加盟し、各生産者が自前のマイクロミルでチェリーの収穫からウォッシュド精製・乾燥までを管理する協同組合。フェアトレードおよびオーガニック認証を取得し、オレンジブロッサムやイチゴ、ハニーやシナモンを思わせる香味のロットを輩出

  • フィンカ・エル・ハルディンFinca El Jardín
    📍 コロンビア・トリマ県 プラナダス⛰️ 約1,857m

    4代目生産者ホルヘ・エリアス・ロハス氏が営む3ヘクタールの家族農園。カトゥーラ・イエローコロンビア・ピンクブルボン・レッドブルボン・ゲイシャなど6品種を作り分け、72時間の密閉発酵を含む多段階の実験的精製で自社ブランド「ラ・ロカ・ステート」のマイクロロットを生産


精製方法

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫
2
果肉除去
3
水洗い・発酵
4
乾燥
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴

トリマではウォッシュド(水洗式)が主流の精製法で、ASOPEPやMULTICOOPなどの生産者協会が発酵槽でのミューシレージ分解とアフリカンベッドでの天日乾燥を組み合わせ、クリーンな酸味とストーンフルーツの果実感を引き出す。フィンカ・エル・ハルディンのようなマイクロロット生産者では、72時間の密閉発酵と機械乾燥・温室乾燥を多段階で組み合わせる実験的な精製も広がっており、同じウォッシュド精製の中でもロットごとに風味の幅が生まれている。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いコロンビア トリマコロンビア ウイラエチオピア イルガチェフェパナマ ボケテケニア AAブラジル セラード

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜92℃(中煎りの甘みと果実香を引き出す温度帯)
  • 挽き目:中挽き〜中細挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ/エアロプレス(ストーンフルーツの酸を明るく引き出す)
  • 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → 柑橘の酸味主体、14g → チョコレートとボディが際立つ)

📏 基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

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