
マダガスカル 中央高地
多様な野生コーヒーが分布する生物多様性の島で育つ希少アラビカ
マダガスカルは多様な野生Coffeaが分布するコーヒー生物多様性の宝庫。生産の主体はロブスタで、FOFIFAによればアラビカは約5%。中央高地のブルボン系アラビカはナチュラル精製で花と果実の繊細な香りを持つ
産地情報
| 産地 | マダガスカル・中央高地(フィアナランツォアなど高地。ヴァキナンカラトラ地方は歴史的な栽培地域) |
|---|---|
| 品種 | アラビカ・ブルボン系 |
| 標高 | 700〜1,800m(FOFIFA資料のアラビカ栽培帯) |
| 味わい | シトラス・レッドフルーツ・チョコレート・フローラル・中程度のボディ当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。 |
品種情報
品種:ブルボン(Bourbon)系アラビカ
中央高地ではブルボン系アラビカが栽培される。マダガスカル国立農業研究センター(FOFIFA)は、調査で166を超える野生コーヒーの個体群を採集し、うち150個体群・48種を12haの圃場に保存していると報告している
- ブルボン系アラビカを中心に栽培
- FOFIFAによればアラビカ国内生産の約5%
- FOFIFAが野生コーヒー48種(150個体群)を圃場に保存
マダガスカル高地コーヒーとは
マダガスカルはインド洋西部に位置するアフリカ大陸沖最大の島国で、その生物多様性の豊かさは「第8の大陸」とも称される。コーヒーにおいても例外ではなく、マダガスカルには多くの野生コーヒー(Coffea属)が分布する。種の数は分類の範囲や時点によって変わるため、ここでは確認できた数に限ると、FOFIFAは調査で166を超える個体群を採集し、うち150個体群・48種を12haの圃場に保存していると報告している。2021年にはキュー王立植物園(Royal Botanic Gardens, Kew)のアーロン・デイビス博士とラコトナソロ氏が、北マダガスカルから Coffea callmanderi、C. darainensis、C. kalobinonensis、C. microdubardii、C. pustulata、C. rupicola の6新種を記載した。ただし多くは絶滅危機に瀕しており、商業利用には至っていない。
商業生産の主体は ロブスタ で、FOFIFAによればアラビカは生産の約5%にとどまる(FAOの古い資料ではロブスタ92%・アラビカ8%)。FOFIFAの技術資料では、ロブスタの栽培帯は標高10〜600m、アラビカは700〜1,800mとされる。アラビカは中央高地で栽培され、FOFIFAはフィアナランツォアなど高地のアラビカに触れている。1946年の資料では、イメリナ・ヴァキナンカラトラ・ベツィレオでアラビカが栽培されていたことが記録されている(アンチラベ周辺の現在の農園と品種は一次資料で確認できていない)。低地のロブスタ産地はマダガスカル サンビラノ渓谷の記事で扱っている。
隣のレユニオン島(旧称ブルボン島)からのコーヒーの導入時期と経路は、一次資料では確認できていない。マダガスカルは1895年にフランスの保護国となり、1896年8月6日の法律で正式にフランスの植民地となった。ICOの記録では、輸出可能生産量は1989/90年度に86.2万袋、2012/13年度に110万袋だった。2020年代以降、スペシャルティ志向の農家が中央高地で復活の兆しを見せている。
代表的な産地・生産地域
代表的な農園
- ヴァキナンカラトラ地方(アンチラベ周辺)Antsirabe / Vakinankaratra Region
1946年の資料で、イメリナ・ベツィレオとともにアラビカが栽培されていた地域として記録されている。現在の農園・品種・カップの特徴は一次資料で確認できていない
- イタシ地区(火口湖周辺)Itasy Region🏆 Madagascar Coffee Company公認アラビカ優良産地
マダガスカル・コーヒー・カンパニーが公表する三大アラビカ産地の一つ
- FOFIFA 高原南部地域研究センター(野生コーヒーの保存)FOFIFA Centre Régional de Recherche des Hauts Plateaux Sud
マダガスカル国立農業研究センター(FOFIFA)の地域研究センター(商業農園ではなく研究目的)。FOFIFAの報告では、調査で採集した野生コーヒーのうち150個体群・48種を12haの圃場に生きたまま保存している。FOFIFAはC. eugenioides・C. canephora・C. arabicaの三種を交配した品種Rateloの開発も進めている
精製方法
精製方法
ナチュラル
Natural / Dry Process
フルーティーで甘みが強い。ベリー系の発酵感とワインのような複雑さ
水資源が限られるマダガスカルでは、中央高地の小農家も大半がナチュラル精製(乾燥精製)を採用する。収穫したコーヒーチェリーをそのままアフリカンベッドなどで天日乾燥させ、果肉ごとゆっくりと乾かすことでフルーツの甘みが豆に移行する。ウォッシュド(水洗式)は水不足から「実験的」な位置付けに留まるが、一部スペシャルティ向け農家が試みている。
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
ミディアム ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
生物多様性の宝庫:マダガスカルの野生コーヒー
マダガスカルの固有コーヒー種が世界的に注目される理由は、その 遺伝的多様性 にある。種の数は分類の範囲や時点で変わるが、FOFIFAは調査で166を超える野生コーヒーの個体群を採集し、うち150個体群・48種を12haの圃場に保存していると報告している。こうした野生種は、将来の品種改良の遺伝資源として研究されている。
FOFIFAは、C. eugenioides・C. canephora・C. arabica の三種を交配した品種 Ratelo を開発しており、のちに C. liberica や C. resinosa も系統群に加えている。FOFIFAはさび病などへの抵抗性を報告しているが、旱魃耐性は一次資料で確認できていない。現在、国際的な保全機関とFOFIFAの連携が強化され、絶滅危機に瀕した固有種のジーンバンク整備も急ピッチで進む。
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃
- 挽き目:中挽き〜中細挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ(フローラルとシトラスを鮮明に出す)またはフレンチプレス(ボディとフルーツ甘みを重視)
- 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → シトラスと花の香りが軽やかに、14g → チョコレートとレッドフルーツの厚みが増す)
基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む。本ブログは焙煎度別に折衷を採用
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
目的別に次に読む
- マダガスカルのほかの産地と比べたい → マダガスカル サンビラノ渓谷
- インド洋のほかの島の産地と比べたい → レユニオン ブルボン・ポワントゥ・モーリシャス シャマレル・コモロ グランドコモロ
- ブルボンがどんな品種か知りたい → コーヒー豆の品種一覧
- ナチュラル精製で味がどう変わるか知りたい → コーヒーの精製方法ガイド
訂正(2026-09-29): マダガスカルのコーヒーの固有種を「60種以上」「既知種の約半数」、別の節で「アフリカ全土の既知種130種のうち約40〜44種」、FOFIFAの保存数を「40種以上」と記載し、記事の中で数が揃っていませんでしたが、全国の固有種の総数はいずれも同じ基準で確認できなかったため削除しました。FOFIFAの報告で確認できた、調査で166を超える個体群を採集し、うち150個体群・48種を12haの圃場に保存しているという内容に改めました。この保存を担う施設を「キアンジャバト研究ステーション(ヴァトヴァヴィ・フィトヴィナニ州、海抜約50〜400m)」としていましたが、施設名・所在地・標高は確認できなかったため、報告を掲載しているFOFIFAの高原南部地域研究センターに改めました。2021年の6新種の学名は、デイビス博士とラコトナソロ氏の原著論文(Kew Bulletin)で確認できたため、著者名を補いました。生産の構成を「ロブスタ約85〜90%、アラビカ約10〜15%」、ロブスタ産地を「海抜100〜300m」、アラビカを「標高1,200m超」と記載していましたが、FOFIFAによればアラビカは生産の約5%で、FOFIFAの技術資料では栽培帯はロブスタが標高10〜600m、アラビカが700〜1,800mでした。これに改め、FAOの古い資料の値(ロブスタ92%・アラビカ8%)を年次の異なる資料として添えました。標高欄の「約1,200〜1,600m」もFOFIFA資料のアラビカ栽培帯に改め、生産地域欄の標高は確認できなかったため削除しました。旧州と地方が混ざっていた中央高地の州名とロブスタ産地の地名の列挙は、一次資料で確認できなかったため削除しました。「1894年にフランスが正式に植民地化」と記載していましたが、フランスの外交史料では、1895年に保護国化され、1896年8月6日の法律で正式に植民地となっていました。これに改めました。「19世紀初頭にレユニオン島から最初のアラビカ苗木が持ち込まれた」は一次資料で確認できなかったため削除しました。「1965〜1989年には世界第8位」「ピーク時には年間110万袋超」と記載していましたが、ICOの記録で確認できたのは輸出可能生産量が1989/90年度に86.2万袋、2012/13年度に110万袋だったことで、この期間のピークと順位は確認できませんでした。ICOの値に改め、これと合わない「独立後に大幅に減少」も削除しました。ローリナ(ブルボン・ポワントゥ)について「カフェイン含有量が通常アラビカの約1/3〜1/2」「一部農家が栽培」と記載していましたが、レユニオンの公的博物館資料で確認できたのはカフェイン0.6〜0.8%という値で、マダガスカルでの栽培は確認できなかったため、品種欄などからローリナを削除しました。固有種の多くが「カフェインをほぼ含まない」も一次資料で確認できなかったため削除しました。Rateloを「野生種×アラビカの交雑品種」「旱魃耐性と病害抵抗性」と記載していましたが、FOFIFAの説明ではC. eugenioides・C. canephora・C. arabicaの三種交配で、のちにC. libericaとC. resinosaも系統群に加えられていました。さび病などへの抵抗性はFOFIFAが報告していますが、旱魃耐性は確認できなかったため削除しました。マンドリツァラを「ヴァキナンカラトラ地方」「アンチラベ周辺の中央高地」の産地としていましたが、所在地を一次資料で確認できなかったため、産地欄と本文からこの位置づけを削除しました。あわせて、記事タイトルを「マダガスカル マンドリツァラ/アンチラベ」とし、説明文で「マンドリツァラ産は近年スペシャルティ市場で注目」としていましたが、マンドリツァラの所在地と産地としての実績は一次資料で確認できなかったため、タイトルと比較マップの表示名を「マダガスカル 中央高地」に改め、説明文の記述を削除しました(記事のURLは変えていません)。また、アンチラベ周辺(ヴァキナンカラトラ地方)を、ブルボン系アラビカが栽培されスペシャルティ市場への供給拠点として注目される現在の産地と記載していましたが、FOFIFAの資料と1946年の資料(Persée収録)で確認できたのは、フィアナランツォアなど高地でのアラビカ栽培と、イメリナ・ヴァキナンカラトラ・ベツィレオでの歴史的な栽培で、アンチラベ周辺の現在の農園と品種は確認できませんでした。このため産地欄と本文を歴史的な栽培地域としての記述に改め、この地域のカップの特徴とスペシャルティ供給拠点という記述を削除しました。
訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。
訂正(2026-10-16): 生産者の欄でイタシ地区を「アラビカ栽培適地として最も評価が確立している地区」と記載していましたが、産地の評価を比べた一次資料を確認できなかったため、この一文を削除しました。マダガスカル・コーヒー・カンパニーが三大アラビカ産地の一つとしていることは残しています。あわせて、品種欄の特徴で「中央高地の火山性土壌と昼夜の寒暖差が品質を支える」、生産者の欄のイタシ地区で「クレーター湖を取り囲む火山性土壌と冷涼な夜間気温がブルボンの花の香りと明るい酸味を引き出す」と記載していましたが、火山性土壌と風味・品質の因果を示す一次資料は確認できなかったため、これらの記述を削除しました。
参考文献・情報ソース
- Perfect Daily Grind — A guide to coffee production in Madagascar (2021)
- Madagascar Coffee Company — Our Coffees
- Sprudge — In Madagascar, A Coffee Revival Steps Into The Spotlight(コーヒー復興・マダガスカル珈琲会社・供給網整備)
- Daily Coffee News — Six New Coffee Species Identified in Madagascar (2021)
- Kew Bulletin — Six new species of coffee (Coffea) from northern Madagascar
- Omwani — Madagascar Coffee Production & Sourcing Guide
- Cambridge University Press — The Origins and Development of Coffee Production in Réunion and Madagascar, 1711–1972
- Royal Coffee — Bourbon's Botanical Origins And The Evolution Of Laurina
- Persée — マダガスカルのコーヒー栽培(1946年、イメリナ・ヴァキナンカラトラ・ベツィレオでの栽培)
- FOFIFA — Centre Régional de Recherche des Hauts Plateaux Sud, Fianarantsoa(野生コーヒーの保存、高地のアラビカ)
- FOFIFA — Cérémonie de lancement officiel du projet café RATELO ARABICA(アラビカの比率・Rateloの交配親)
- FOFIFA — Présentation du café RATELO ARABICA(技術資料、栽培帯)
- Kew Plants of the World Online — Coffea
- FAO — マダガスカルのコーヒー(ロブスタ・アラビカの比率、旧資料)
- フランス外務省外交史料館 — マダガスカル併合(1896年)
- U.S. Department of State, Office of the Historian — FRUS 1896(マダガスカル)
- ICO — World Coffee Outlook(ICC 111-5)
- ICO — Historical data on the global coffee trade
- Musées de La Réunion (MADOI) — Une histoire du café Bourbon pointu(ローリナのカフェイン含有量)
- SCA Coffee Standards
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