ゲイシャ(Geisha/Gesha)
ゲイシャ
ゲイシャ(ゲシャ)は、エチオピアの在来系統(landrace)に由来するアラビカ種の品種です。World Coffee Research(WCR)によると、1930年代にエチオピアで採集された種子がタンザニアのリャムング研究所を経て、1953年にコスタリカのCATIEに受領され(アクセッションT2722)、1960年代にパナマへ配布されました。名前とエチオピア南西部の地名ゲシャ(Gesha)との関係、ゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)一帯との個別の由来関係は、一次資料で確認できていません。パナマへの導入年は、生産者フランシスコ・セラシンへのインタビュー(Caficultura de Panamá)では1963年とされますが、同時代の送付記録は確認できていません。
WCRは、パナマへの導入理由の一つをさび病への耐性とし、収量が低く枝が折れやすい品種だったとしています。転機はハシエンダ・ラ・エスメラルダによるベスト・オブ・パナマへの出品です。主催団体SCAPの農園紹介では2004年に初出品して受賞したとされ、WCRは2005年の出品で注目を集め、1ポンド20ドル超の当時の記録的な価格がついたとしています(WCRの記述は初出品の年を述べたものではありません)。2025年のベスト・オブ・パナマでは、ウォッシュドのゲイシャが98点を得たとSCAPが発表しています(特定のロットの評価で、品種全体の点数ではありません)。WCRはジャスミンや桃を思わせる香りを挙げています。パナマ以外にも栽培例があり、中国・保山では、保山市人民政府掲載の記事によると2013年に少量導入されました。豆を選ぶときは、パナマのT2722系統に由来する木か、エチオピアの在来集団かを産地情報で確かめると、同じ名前の違いを捉えやすくなります。
訂正(2026-10-05): 「2004年、ハシエンダ・ラ・エスメラルダ産ロットがベスト・オブ・パナマで高値落札され」と記載していましたが、主催団体SCAPの農園紹介は2004年にゲイシャを初出品して受賞したとする一方、World Coffee Researchの品種カタログは出品を2005年とし、そのとき1ポンド20ドル超の当時の記録的な価格がついたと説明しており、資料によって年が異なるため、両方の記録を分けて示す形に改めました。SCAPの過去オークション記録では2004年のロットの落札額は確認できていません。あわせて、パナマへの経路を「1950年代にコスタリカのCATIEを経てパナマへ渡った」と記載していましたが、World Coffee Researchの記録では1953年にCATIEが受領し、1960年代にパナマへ配布されたとされているため、その内容に改めました。
訂正(2026-10-06): 「出品の年は資料によって異なり」「World Coffee Researchでは2005年の出品」と記載していましたが、World Coffee Researchの原文は「2005年にピーターソン家がベスト・オブ・パナマに出品して注目を集めた(came to prominence in 2005)」という内容で、初出品の年を述べたものではなかったため、SCAPの「2004年に初出品・受賞」と食い違うものとして扱わず、それぞれの原文の範囲の書き方に改めました。
訂正(2026-10-14): 「1930年代に英国の調査隊が採取し」「ジャスミンや柑橘を思わせる華やかな香り」「パナマ・コロンビア・エチオピアいずれでも高標高・浅煎り寄りのロットを選ぶと、この品種特有の香り高さが際立つ」と記載していましたが、World Coffee Researchの品種カタログで確認できるのは1930年代にエチオピアで採集され、タンザニアのリャムング研究所を経て1953年にCATIEへ渡った経緯と、ジャスミンや桃を思わせる香りまでで、採集者が英国の調査隊であることと、柑橘の香り、標高・焙煎度と香りの関係は一次資料で確認できなかったため改めました。あわせて、一次資料で確認できない「英国の調査隊」「柑橘」の記述と、高標高・浅煎りのロットを勧める一文を外しました(ゲイシャ品種の起源と世界への広がりの記事の記述に合わせました)。
タイ ドイトゥン
アヘン畑を森に変えた王室財団のアラビカ
タイ北部チェンライ県、故シーナカリン王太后が1988年に始めたドイトゥン開発プロジェクトがアヘン畑と荒廃林をアラビカの森へ変えた産地。標高800〜1,200mでカティモール系などを育ててウォッシュド精製、柑橘とナッツ、ミルクチョコレートの穏やかなカップでEU・日本のGIにも登録
中国 保山ゲイシャ
2013年導入、保山ゲイシャはパナマに並べるか
雲南保山で2013年にパナマから導入されたゲイシャ種を検証。適地は海抜1400〜1800mとされ、佐園の生豆価格は1kg1200〜1500元、国際評価93点ロットの実例を公式資料と一次情報で解説
台湾 古坑
台湾コーヒー発祥の地、御用珈琲の記憶
雲林県古坑は農業部農糧署が台湾コーヒーの「起源地」と紹介する産地で、日本統治時代に皇室へ献上された「御用珈琲」の歴史を持ちます。2020年には嵩岳咖啡莊園の藝伎種がCQIのスペシャルティ評価で89.25点を得たと農糧署の資料が紹介しています
パナマ ボルカン
バル火山を挟んでボケテの反対側、チョコレートとナッツの落ち着いた甘み
同じチリキ州でもゲイシャで名を馳せたボケテとはバル火山を挟んで反対側。カトゥーラ・カトゥアイなどが育つ火山灰土壌の産地で、チョコレートとナッツの落ち着いた甘みが持ち味です
コスタリカ トゥリアルバ
活火山の麓の産地とCATIEのコーヒー遺伝資源コレクション
活火山トゥリアルバの麓、ICAFE掲載値で標高600〜1,300mに広がるコスタリカの産地。国際農業研究機関CATIEが1949年からコーヒー遺伝資源のコレクションを守る「生きた種子庫」の地でもあり、穏やかな酸味とやさしい甘みが特徴のカップに仕上がる
パナマゲイシャはなぜここまで高騰したのか
Best of Panamaオークション30年史——2000年代半ばの記録的高値から13,701ドルへ
1996年発足のBest of Panamaオークションが2025年に記録した1kgあたり30,204ドルの落札事例を軸に、価格が高騰し続ける市場構造と歴史的な価格推移を一次資料ベースで整理します
グアテマラ アカテナンゴ
活火山フエゴのそばで育つ、ナチュラル精製の果実味
グアテマラANACAFEが定める8つの産地プロフィールの一つアカテナンゴ渓谷は標高1,300〜2,000m 活火山フエゴの隣で農園を営み噴火の灰がミネラル豊富な土壌を作る De La Genteパートナーの小規模生産者組合はナチュラル精製でマンゴーやきび砂糖のような甘みを引き出す
マラウイのコーヒー|ミスク・ヒルズ(チティパ県)の産地・品種と味
タンザニア国境の高地——チティパ県で育つ、ベリーと透明感のカップ
マラウイ(マラウィ)最北部チティパ県、タンザニア国境沿いのミスク丘陵で栽培されるアラビカ。標高1,700〜2,000m、ニャイカ(カティモール129)・ゲイシャなどをウォッシュド精製し、ベリーやストーンフルーツのような酸味とフローラルな香りで紹介される
マラウイ ムズズ
ミスク山の高地で栽培される、繊細なシトラスと花香のアラビカ
北部ミスク丘陵・ヴィフィヤ丘陵の標高1,000〜2,000mで栽培されるマラウイのスペシャルティアラビカ。ゲイシャ・ニャイカ(Catimor 129)・SL28が混在し、ウォッシュド精製が主流。味わいの目安(本ブログの整理):シトラス・カラメル・フローラル
パナマ ボケテのコーヒー|ゲイシャで知られるチリキ州の高地の産地と味
エチオピア起源のゲイシャ種を育てるチリキ高原の産地
パナマ西部チリキ州のボケテ地区は、標高1,500〜2,000m(パナマ農業開発省MIDA)でコーヒーが育つ産地。2000年代半ばのBest of Panamaで注目を集めたゲイシャの香り、代表的な農園、ウォッシュドの精製をまとめる
参考文献・情報ソース