
コーヒーは深煎りほどカフェインが多く、デカフェはカフェインゼロというのは本当か
「苦い=カフェインが多い」という感覚は査読研究では裏付けられていない、デカフェにも微量のカフェインは残る
深煎りとカフェイン量、デカフェのカフェインゼロ説という2つの通説を一次資料で検証します。同じ淹れ方なら深煎りほどカフェインが多いという結果は研究では示されておらず、デカフェもFDAの資料で1杯あたり最大15mg程度が残るとされています
この記事の要点
- 「深煎りは苦いからカフェインが多い」という感覚的なイメージは査読研究では裏付けられていない
- Ludwig et al.(2014, Food & Function)は、カフェインが焙煎の過程で比較的安定している(焙煎温度で大きく減るのはクロロゲン酸類)ことを報告している
- 2024年の対照実験(Lindsey et al., Scientific Reports)では、同じ淹れ方なら深煎りのカフェイン濃度はむしろ低め、抽出収率をそろえると高めで、差の向きは比べ方で変わる
- カフェイン量を左右する主な要因は焙煎度ではなく品種(アラビカ/ロブスタ)・豆の使用量・抽出方法
- デカフェは「カフェインゼロ」ではなく、FDAの資料では1杯(8oz)あたり2〜15mg程度のカフェインが残る
- 米国の業界団体はデカフェを通常97%以上のカフェインを除いたものと説明しているが(FDAの連邦基準ではない)、完全除去は前提とされていない
「深煎りは苦いからカフェインが多そう」「デカフェだからカフェインゼロで安心」——コーヒーのカフェイン量をめぐるこの2つのイメージは、どちらも広く信じられていますが、一次資料を確認すると実態とはズレがあります。焙煎とデカフェ、それぞれのカフェイン量について査読研究・公的機関の資料から検証します。
通説: 深煎りほどカフェインが多い
「深煎り=しっかり焙煎した=苦味が強い=カフェインも多い」という連想は直感的には自然ですが、根拠になる研究を確認すると話は単純ではありません。
Ludwig et al.(2014, Food & Function)は、焙煎および抽出条件がカフェインとクロロゲン酸類(CQA)の含有量に与える影響を分析し、カフェインは焙煎の過程で比較的安定している一方、CQAは高温になるほど失われることを報告しています。つまり焙煎が進むほど変化するのはカフェインではなく別の成分であり、「カフェイン/CQA比」が焙煎度合いを示す指標として使えるとされているほどです。
2024年には、比べ方の条件を分けた対照実験が報告されました。Lindsey et al.(2024, Scientific Reports)は、エチオピア産の生豆2種・焙煎度5段階・抽出時間3通りを組み合わせた30通りの試料を、AeroPressで湯と粉の重量比15:1にそろえて淹れ、抽出収率とカフェイン量を測っています。その結果、同じ淹れ方では深煎りのカフェイン濃度は浅煎り・中煎りより総じて低く、反対に抽出収率(豆から溶け出した成分の割合)をそろえて比べると深煎りの方が総じて高いというものでした。著者らは、焙煎で溶け出す成分(カフェインを含む)が揮発・分解することと、豆が多孔質になって溶け出しやすくなることが逆向きに働くと考察しています。同じ淹れ方で比べると深煎りの方がむしろ少なく、「深煎りほどカフェインが多い」とは言えません。抽出収率をそろえた比べ方では深煎りの方が高くなり、差の向きは比べ方によって変わります。
PMCに掲載されたレビュー(Olechno et al. 2021, Influence of Various Factors on Caffeine Content in Coffee Brews)は、焙煎中にカフェインが減るという証拠は決定的でないとし、抽出方法や使う豆・湯の量の違いが結果を大きく左右すると指摘しています(抽出方法別のカフェイン量も参照)。カフェイン量を主に左右するのは焙煎度よりも、品種(アラビカかロブスタか)・豆の使用量・抽出方法の3要因です。詳しい背景はカフェインとコーヒーの健康な付き合い方でまとめています。
苦味が強く感じられる深煎りの体感は、カフェインではなく焙煎で生成されるさまざまな苦味成分によるものと考える方が、現時点の一次資料とは整合的です(焙煎度によって関わる成分が変わるとされ、特定の1成分だけで説明できるものではありません)。
通説: デカフェはカフェインゼロ
デカフェ(脱カフェインコーヒー)は「カフェインを気にせず飲める」飲み物として扱われますが、正確には「カフェインがほぼゼロに近いが完全にゼロではない」飲み物です。
FDAの消費者向け資料(Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much?)によれば、8oz(約240mL)のデカフェコーヒー1杯には2〜15mg程度のカフェインが含まれるとされています。通常のドリップコーヒー1杯が95〜165mg程度であることを考えると、デカフェは95%以上カットされてはいるものの、ゼロではありません。
| 種類 | カフェイン量の目安(8oz=約240mL) |
|---|---|
| レギュラードリップコーヒー | 95〜165mg |
| デカフェコーヒー | 2〜15mg |
代表的な脱カフェイン工程には、蒸気と溶媒を使う溶媒抽出法、水と活性炭フィルターのみを使うスイスウォータープロセス、超臨界CO2を使うCO2法の3方式があります。米国の業界団体(全米コーヒー協会)は、デカフェを通常97%以上のカフェインを除いたものと説明しています。これはFDAの連邦基準ではなく業界の説明ですが、裏を返せば「数%は残ることがある」ということでもあります。なおEUでは、コーヒー抽出物(インスタントコーヒー)について、乾燥重量あたりのカフェインが0.3%以下という基準があります。
なぜ「ゼロ」だと誤解されやすいか
デカフェのパッケージ表示は多くの場合「カフェインレス」「Decaffeinated」であり、「カフェインを大幅にカットした」ものであって「カフェイン0%」ではありません。日常的にはこの差はほとんど無視できる量ですが、カフェインに強く敏感な人・薬を服用中で相互作用が懸念される人・妊娠中でカフェイン摂取量を厳密に管理したい人にとっては、2〜15mgという幅を知っておく価値があります。妊娠中の摂取目安については妊娠中のコーヒーは1日どれくらいまで飲んでいいかで整理しています。
まとめ
深煎りだからカフェインが多い、という感覚は査読研究では裏付けられておらず、カフェイン量を主に左右するのは品種・使用量・抽出方法で、焙煎度による差は比べ方によって向きが変わる程度です。一方でデカフェも「カフェインゼロ」ではなく、FDAの資料では1杯あたり2〜15mg程度が残ります。どちらも「量の程度」を正しく知ることが、カフェインとの付き合い方を考えるうえでの出発点になります。カフェインを控えたい場合は、焙煎度で選ぶのではなく1杯に使う豆の量を減らすかデカフェを選び、デカフェでも杯数を重ねれば摂取量が積み上がる点を計算に入れておくと確実です。
目的別に次に読む
- 淹れ方でカフェイン量がどう変わるか知りたい → 抽出方法によってコーヒーのカフェイン量はどれくらい変わるのか
- カフェインとの付き合い方の全体像を知りたい → カフェインとコーヒーの健康な付き合い方
- 焙煎度ごとの味の違いを知りたい → コーヒーの焙煎(ロースト)解説
- 妊娠中にどれくらい飲めるか知りたい → 妊娠中のコーヒーは1日どれくらいまで飲んでいいか
訂正(2026-09-28): デカフェの「97%以上の除去」をFDAの基準と記載していましたが、FDAがこれを定めた連邦基準は確認できず、米国の業界団体の説明であるため改めました。あわせて、「カフェインを完全に避ける必要がある妊娠中の方」という記述は、米国産科婦人科学会(1日200mg未満が目安)などの公的な目安と合わないため改め、「99%カット」の表現と、深煎りの苦味をメラノイジンで代表させた説明を改めました。
訂正(2026-10-06): 焙煎度の節で、レビュー(Olechno et al. 2021)について「抽出方法による含有量差の方が焙煎度による差よりもはるかに大きいとされています」と記載していましたが、同レビューの本文で確認できたのは「焙煎中にカフェインが減るという証拠は決定的でない」「抽出方法や使う豆・湯の量が結果を左右する」までで、「はるかに大きい」という比較は確認できなかったため、原文の範囲の書き方に改めました。
追記(2026-10-06): 焙煎度とカフェイン量の節に、2024年の対照実験(Lindsey et al., Scientific Reports)を加えました。あわせて、説明文の「焙煎温度による含有量の差はほぼ確認されず」とよくある質問の「焙煎温度によるカフェイン量の有意な差は確認されていません」を、同じ淹れ方なら深煎りほど多いという結果は示されていない(同じ淹れ方では深煎りの方が少なめ、抽出収率をそろえると多め)という書き方に改めました。本文とまとめの「カフェイン量を左右する(決める)のは焙煎度ではなく」も、「主に左右するのは焙煎度よりも品種・使用量・抽出方法」という書き方に改めました。
参考文献・情報ソース
- Ludwig et al. 2014 — Variations in caffeine and chlorogenic acid contents of coffees: what are we drinking?(Food & Function)
- Olechno, E. et al. (2021) Influence of Various Factors on Caffeine Content in Coffee Brews. Foods 10(6):1208, DOI: 10.3390/foods10061208
- Lindsey, Z.R., Williams, J.R., Burgess, J.S., Moore, N.T., Splichal, P.M. (2024) Caffeine content in filter coffee brews as a function of degree of roast and extraction yield. Scientific Reports 14:29126, DOI: 10.1038/s41598-024-80385-3
- FDA — Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much?
- Swiss Water Process — A Closer Look at Water-Process vs Chemical Solvent Method Decaf Coffee
- National Coffee Association — All About Decaffeinated Coffee
- EU Directive 1999/4/EC(コーヒー抽出物・チコリ抽出物)
- 食品安全委員会 — ファクトシート「食品中のカフェイン」
よくある質問
- 深煎りコーヒーはカフェインが多いのですか
- 同じ淹れ方で比べて深煎りほど多いという結果は、査読研究では示されていません。Ludwig et al.(2014)はカフェインが焙煎の過程で比較的安定していると報告しており、2024年の対照実験(Lindsey et al.)では、同じ淹れ方なら深煎りの方がむしろ低めで、抽出収率をそろえて比べると高めでした。カフェイン量を左右する主な要因は焙煎度ではなく、品種・豆の使用量・抽出方法です
- デカフェにはカフェインが全く含まれていないのですか
- 含まれています。FDAの資料によると、8oz(約240mL)のデカフェ1杯には2〜15mg程度のカフェインが残るとされています。米国の業界団体はデカフェを通常97%以上のカフェインを除いたものと説明していますが(FDAの連邦基準ではありません)、100%除去が前提ではありません
- デカフェのカフェインは気にしなくていいレベルですか
- 通常のドリップコーヒー1杯(95〜165mg程度)と比べると大幅に少なく、多くの人にとっては無視できる量です。ただしカフェインに強く敏感な人や、医師からカフェインを控えるよう指示されている人などは、ゼロではない点を意識する価値があります
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