抽出方法によってコーヒーのカフェイン量はどれくらい変わるのか

エスプレッソが一番濃いのに、なぜドリップ1杯の方が摂取量は多くなるのか

同じ豆でも、エスプレッソ・ドリップ・インスタント・デカフェ・コールドブリューでカフェイン濃度は大きく異なります。USDA・文部科学省の公的データを基に、抽出方法別のカフェイン量を一杯あたり・100mlあたりで比較します


この記事の要点

  • USDA FoodData Centralを基にしたIFICの数値では、濃度(100mLあたり)はエスプレッソ約215mg・ドリップ約41mg・インスタント約26mg・デカフェ約1mgの順に高い
  • 一方、一杯あたりの総量ではドリップ8fl oz(約240mL)が約96mgと、エスプレッソ1ショット(約30mL、約64mg)より多くなる——「濃い=1杯の摂取量が多い」わけではない
  • 文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)では、レギュラーコーヒーの浸出液(中びき粉10gに熱湯150mL)のカフェインは100gあたり60mgで、粉を多めに使う分、IFICのドリップより濃い
  • 査読研究(Fuller & Rao, 2017)では、中煎り・粗挽きの豆を同じコーヒーと水の比率で淹れた条件で、コールドブリューのカフェイン濃度がホットブリューより約27%高かった(深煎り・粗挽きでは約18%、中挽きでは有意差なし)
  • 焙煎度(浅煎り・深煎り)によるカフェイン量の差は小さく、抽出方法・豆の使用量の方がはるかに影響が大きい

「エスプレッソは濃いからカフェインが多い」「デカフェはカフェインゼロ」——コーヒーのカフェイン量には、体感と実際の数値がずれやすいポイントがいくつかあります。ここでは公的データベースの数値を使い、抽出方法別のカフェイン量を「濃度(同じ液量あたり)」と「1杯あたりの総量」の両方で整理します。

濃度で比べるとエスプレッソが圧倒的に高い

米USDA FoodData Centralを基にしたIFIC(国際食品情報協議会)のカフェイン計算ツールでは、抽出方法ごとに次の数値が示されています。基準量はエスプレッソが1 fl oz(約30mL)、それ以外は8 fl oz(約240mL)で、元の数値はUSDA FoodData Centralの2019年のデータです。

抽出方法 基準量 カフェイン量
エスプレッソ 30mL 約64mg
ドリップ 240mL 約96mg
インスタント 240mL 約62mg
デカフェ 240mL 約2.4mg

100mLあたりに換算すると、エスプレッソは約215mg、ドリップは約41mg、インスタントは約26mg、デカフェは約1mgとなり、エスプレッソはドリップの5倍以上の濃度です。ただし実際に飲む量はエスプレッソが圧倒的に少ないため、この表だけで「エスプレッソの方がカフェインを多く摂れる」と判断するのは早計です。

1杯あたりの総量ではドリップがエスプレッソを上回る

上の表の「基準量」の列を見ると、ドリップコーヒー1杯(約240mL・約96mg)は、エスプレッソ1ショット(約30mL・約64mg)より総量で多いことがわかります。エスプレッソをブラックのまま何杯もお代わりする人は少ない一方、ドリップコーヒーはマグ1杯(240mL前後)を飲み切るのが一般的なため、結果として1回に摂取するカフェイン量はドリップの方が多くなりやすいということです。

「濃さ」と「1回に摂取する量」は別の指標だと意識すると、実際の摂取管理がしやすくなります。1日の摂取目安についてはカフェインとコーヒーの健康な付き合い方で解説しています。

日本の成分表のレギュラーコーヒーはIFICより濃い

文部科学省の食品成分データベース(日本食品標準成分表 八訂)では、レギュラーコーヒーの浸出液(中びき粉10gを熱湯150mLでドリップ)のカフェインは100gあたり60mgです。IFICのドリップ(100mLあたり約41mg)より高いのは、「国によってコーヒーの性質が違う」からではなく、試料を作るときの粉の量(濃さ)が異なるためと考えられます。なお、成分表のインスタントコーヒーの項目は粉末の値で、お湯に溶かした液の値ではないため、この表とそのまま比べることはできません。インスタントとレギュラーの違いそのものについてはインスタントコーヒーとレギュラーコーヒーの違いで詳しく扱っています。

コールドブリューは条件によって濃度が高くなる

査読研究(Fuller & Rao, 2017、Scientific Reports)では、中煎り・粗挽きの豆を同じコーヒーと水の比率で淹れた条件で、コールドブリューのカフェイン濃度がホットブリューより約27%高いという結果が報告されています(深煎り・粗挽きでは約18%高く、中挽きでは統計的に有意な差はありませんでした)。さらにコールドブリューは濃縮タイプとして豆を多めに使うレシピもあり(比率はレシピによってさまざまです)、その場合は実際に飲む1杯あたりのカフェイン量がさらに高くなります。アイスコーヒーとの違いはアイスコーヒーとコールドブリューは何が違うのかで詳しく解説しています。

焙煎度はほとんど影響しない

「深煎りは苦いからカフェインが多い」というイメージは実は不正確です。査読研究(Ludwig et al., 2014)は、焙煎温度197℃(浅煎り)・211℃(中煎り)・219℃(深煎り)の豆を比較し、カフェインは焙煎の過程で比較的安定していると報告しています(統計的な有意差の記載は、原著本文では確認できていません)。焙煎でカフェインがわずかに失われても、豆の質量も減るため、重さあたりの含有量としては大きく変わらない、と説明されることがあります。

まとめ

カフェイン量を左右する最大の要因は、抽出方法の種類そのものよりも「豆の使用量」と「実際に飲む液量」です。濃度で選ぶならエスプレッソ、1杯あたりの摂取量を抑えたいならデカフェやインスタント、逆にしっかり摂りたいならコールドブリューやドリップ——目的に応じて選ぶのが実用的です。品種によるカフェイン量の違いはアラビカとロブスタの違い|味・カフェイン量・価格・栽培できる標高を比較もあわせてご覧ください。


目的別に次に読む


訂正(2026-09-28): Fuller & Rao(2017)の比較を「同じ豆・粗挽きで約27%高い」と記載していましたが、約27%は中煎り・粗挽きの条件の結果で(深煎り・粗挽きは約18%、中挽きは有意差なし)、比較条件は同じコーヒーと水の比率であるため改めました。あわせて、文部科学省の成分表で「ドリップとインスタントが液100mLあたりどちらも約60mg」としていた記述は、成分表のインスタントの値が粉末のものでお湯に溶かした液の値ではないため削除し、Ludwig et al.(2014)の「有意差なし」を「比較的安定」という報告に、デカフェの除去率(95〜97%)を業界団体の説明に改め、コールドブリューの豆の量(1Lあたり50〜100g)は一般的な基準を確認できなかったため削除しました。

よくある質問

一番カフェインが多い抽出方法はどれですか?
濃度(同じ液量あたりの量)で比較するとエスプレッソが最も高濃度です。IFICの数値では100mLあたり約215mgで、ドリップ(約41mg)の5倍以上になります。ただし実際に飲む1杯の量が少ない(エスプレッソは約30mL)ため、1杯あたりの総摂取量ではドリップ1杯(約240mL・約96mg)の方がエスプレッソ1ショット(約64mg)より多くなります
デカフェはカフェインが完全にゼロですか?
いいえ、完全にゼロにはなりません。IFICの数値では8fl oz(約240mL)あたり約2.4mgとごく微量ですが残存します。米国の業界団体はデカフェを通常97%以上のカフェインを除いたものと説明していますが、溶媒抽出法・スイスウォータープロセス・CO2法のどの方式でも完全には除去できません。デカフェの仕組みは「カフェインとコーヒーの健康な付き合い方」で詳しく解説しています
深煎りは浅煎りよりカフェインが多いのですか?
差は小さいと考えられています。査読研究(Ludwig et al., 2014)は、焙煎温度197℃(浅煎り)・211℃(中煎り)・219℃(深煎り)の比較で、カフェインは焙煎の過程で比較的安定していると報告しています。カフェイン量を左右する主な要因は焙煎度ではなく、豆の使用量・抽出方法・抽出時間です

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