
ザンビアのコーヒー|ノーザン州・ムチンガ州の産地・品種と味の特徴
ムチンガ山脈の台地が育む——SL28とカティモールが交差する、チョコ&シトラスのクリーンカップ
ザンビアのコーヒーは、北部のノーザン州と2011年に新設されたムチンガ州にかけての高原が中心の産地。世界銀行の資料による栽培史、SL28・カティモール129の品種、ウォッシュドのレモンとダークチョコのような味(販売店の紹介)を、確認できた範囲で解説
この記事の要点
- ザンビアのアラビカ栽培の中心は、北部のノーザン州と、2011年に新設されたムチンガ州にかけての北東部一帯
- 世界銀行の資料では、1920〜40年代にムバラで商業栽培が行われ、1954年にノコンデで小農家の天水栽培が再開し、1959年に研究が始まった
- 生産量は、米国大使館の電報に引用されたザンビア・コーヒー生産者協会(ZCGA)の数値で2004/05年度に6,800t。その後の年次は政府の統計で未確認
- 品種はSL28とカティモール129が挙げられる(販売店・業界メディアの紹介)。SL28は1935年にケニアのスコット農業研究所が選抜した品種(World Coffee Research)
産地情報
| 産地 | ザンビア ノーザン州(カサマ・ムバラ各地区)・ムチンガ州(ノコンデ・イソカ・マフィンガ各地区) |
|---|---|
| 品種 | SL28・Catimor 129(カティモール) |
| 標高 | 1,300〜1,600m(ムバラ地区は最大1,600m) |
| 味わい | レモン・ダークチョコレート・スパイス・ヘーゼルナッツ・マイルドな甘さ当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。 |
品種情報
品種:SL28 / Catimor 129
世界銀行の資料によると、ザンビアでは1920〜40年代にムバラで商業栽培が行われ、1954年にノコンデで小農家による天水栽培が再開、1959年に研究が始まった。栽培されているのはアラビカ(Coffea arabica)である(世界銀行資料 / Perfect Daily Grind)
- SL28、1931年に見つかったTanzania Drought Resistantの木から、ケニアのスコット農業研究所(Scott Agricultural Laboratories)が1935年に選抜した品種で、乾季耐性と明るいシトラス酸味・フルーツ感で知られる(World Coffee Research)。ザンビアへはケニア育種系統が伝播し、ノーザン州高地の標高・雨季・土壌と相性が良く、カテシ農園など主要エステートの主力品種となっている(Square One Coffee産地記述)
- Catimor 129(カティモール129)はCaturraとティモール・ハイブリッドに由来する系統(World Coffee Research)。ザンビアの小農家の生産を支える品種の一つとされる(Omwani Coffee / Perfect Daily Grind)
ザンビア ノーザン州とは
ザンビア共和国は中部アフリカの内陸国で、国土のほぼ全域が標高1,000m以上の高原台地に広がります。コーヒー栽培に最適な高標高の環境は国土そのものが持ち合わせており、なかでもノーザン州と、2011年に新設されたムチンガ州にかけての北東部一帯がアラビカ栽培の中心地です。
世界銀行の資料によると、ザンビアでは1920〜40年代にムバラで商業栽培が行われ、1954年にノコンデで小農家による天水栽培が再開し、1959年に研究が始まりました。
生産量は、米国大使館の電報に引用されたザンビア・コーヒー生産者協会(ZCGA)の数値で2004/05年度に6,800tでした。その後の年次の生産量は、政府の原統計で確認できていません。
カップキャラクターの核は、ウォッシュド精製が生み出すクリーンで透明感の高い酸味と甘さ。SL28由来のシトラス・レモンノート、Catimor 129が担うボディとナッツ・チョコレートのまろやかさが混ざり合い、「フルーツと甘いダークチョコが共存するバランスの良い1杯」と評されます(Burman Coffee / Fathom Coffee産地記述)。国際的なスペシャルティバイヤーからは「東アフリカの中で見落とされがちな宝石」として注目度が高まりつつある産地です。
代表的な農園・生産組織
代表的な農園
- カテシ農園(Northern Coffee Corporation傘下)Kateshi Estate — Northern Coffee Corporation Ltd.🏆 Rainforest Alliance・UTZ認証取得
Northern Coffee Corporation Limited(NCC)が運営するエステート。Olamの公式発表によると、同社は2012年9月にNCCを約615万USDで買収し、NCCをザンビア最大のコーヒー農園と説明している。Rainforest Alliance・UTZ両認証を取得しており、ウォッシュド・ナチュラル・アナエロビックの複数プロセスを展開する(Olam Group公式発表 / Burman Coffee)
- ンゴリ農園Ngoli Estate
ムバラ地区に位置し、ノーザン州の中でも標高が高い部類に入る。ウォッシュドのAAグレードを主力とし、クリーンで細かい酸味が特徴的なロットとして米国スペシャルティ市場に輸出されている(Burman Coffee — Zambia Ngoli Estate Washed AAA)
- マフィンガ・ヒルズ 小農家グループMafinga Hills Smallholder Group
マフィンガ丘陵(最高地点2,339m、マフィンガ町議会)周辺の小農家が栽培するロット。Rainforest Alliance認証を取得しており、オーストラリアのスペシャルティ市場向けに「レインフォレスト・コーヒー」としてブランド化されている(Green Bean Roasters Melbourne)
精製方法
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
ウォッシュドが主流。 収穫したチェリーをパルパーで果肉除去し、12〜36時間の水発酵でムシラージを分解する。その後レイズドベッドで天日乾燥する。カテシ農園ではナチュラルおよびアナエロビックナチュラルも生産されており、後者は赤果実・シトラス・チョコレート・スパイスが重なる複雑なカップとなる(Burman Coffee産地記述)。NCCの農園資料では、ンスンズ(Nsunzu)農園の収穫・出荷期は5〜9月とされる。
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
ミディアム ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃
- 挽き目:中挽き〜中細挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ・フレンチプレス
- 豆の量:12g / 200ml(中煎りでチョコとシトラスのバランスを引き出すなら92℃前後が最適)
基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)。中煎りのザンビアはやや低温寄り(88〜92℃)でシトラス酸を活かしつつボディを出しやすい
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
目的別に次に読む
- SL28がどんな品種か知りたい → ケニア キリニャガ・コーヒー豆の品種一覧
- 東アフリカの主な産地と比べたい → 東アフリカコーヒー産地大全
- 近い国の産地と比べたい → タンザニア ムベヤ・マラウイのコーヒー(ミスク・ヒルズ)・ジンバブエ 東部高地
- 水洗(ウォッシュド)で味がどう変わるか知りたい → コーヒーの精製方法ガイド
訂正(2026-09-29): 産地情報で「ノーザン州(カサマ・ノコンデ・イソカ・ムバラ各地区)」、本文で「ノーザン州ムチンガ山脈」、農園の所在地で「ノーザン州マフィンガ丘陵」と記載していましたが、ムチンガ州政府と国会の資料によれば、ムチンガ州は2011年に新設され、ノコンデ・イソカ・マフィンガの各地区は同州に属します。ノーザン州に含めていたのは誤りでした。産地情報を「ノーザン州(カサマ・ムバラ各地区)・ムチンガ州(ノコンデ・イソカ・マフィンガ各地区)」、本文を「ノーザン州と、2011年に新設されたムチンガ州にかけての北東部一帯」、マフィンガ丘陵を「ムチンガ州」に改めました。あわせて、カテシ農園の所在地の「カサマ地区(ノコンデ方面)」は、ノコンデ地区が別の州に属し位置関係を一次資料で確認できないため「ノーザン州カサマ地区」に改めました。追加の照合で、次の点も改めました。「ザンビア輸出量の97%を担うノーザン州」「NCCはザンビア輸出量の約97%を担う」「1972年設立」「ノーザン州最大」は確認できなかったため削除し、Olamの公式発表にある「2012年9月に約615万USDで買収」「ザンビア最大のコーヒー農園(同社の説明)」に改めました。歴史を「1950年代の宣教師による試験植え」「1970年代の世界銀行支援」「1985年にICOが年間350MTの輸出枠」と記載していましたが、確認できなかったため削除し、世界銀行の資料にある「1920〜40年代にムバラで商業栽培、1954年にノコンデで小農家の天水栽培が再開、1959年に研究開始」に改めました。生産量「2004/05年度に6,654MT」は、米国大使館の電報に引用されたZCGAの数値(6,800t)に改め、確認できなかった「2015年に約180MT」「2019年頃に約2,000MT」は削除しました。SL28を「スコットランド・ラボラトリーズが1931年頃に選抜」と記載していましたが、World Coffee Researchによれば1931年に見つかった木からScott Agricultural Laboratoriesが1935年に選抜したもののため改めました。Catimor 129を「コロンビアのCaturra×ティモール・ハイブリッド1343の交配体でCBDに高い耐性」としていましたが、確認できたのはCaturraとティモール・ハイブリッドに由来することまでのため、その範囲に改めました。マフィンガ丘陵の最高地点はマフィンガ町議会の資料の2,339mに改め、確認できなかった栽培標高「1,500〜2,300m」と「ザンビア最高峰」は削除しました。収穫・出荷期(収穫5〜8月、輸出9〜翌4月、スペシャルティ出荷6〜8月)は国全体として確認できなかったため、NCCの農園資料にあるンスンズ農園の5〜9月に改めました。
訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。
参考文献・情報ソース
- Perfect Daily Grind — Exploring Zambia as a Coffee Origin(産地歴史・生産統計・精製・品種)
- Omwani Coffee — Zambia Coffee Production & Sourcing Guide(栽培地域・統計・収穫カレンダー・価格データ)
- Burman Coffee — Zambia Kateshi Estate AA Washed(農園・品種・フレーバー詳細)
- Burman Coffee — Zambia Kateshi RFA Anaerobic Natural(アナエロビック精製ロット詳細)
- Olam Group — Olam Acquires Northern Coffee Corporation in Zambia(NCC買収・農園規模・投資情報)
- Green Bean Roasters Melbourne — Zambia Mafinga Hills Rainforest Coffee(マフィンガ丘陵・小農家・Rainforest Alliance認証)
- Muchinga Provincial Administration — ムチンガ州政府(2011年の州設立・所属地区)
- National Assembly of Zambia — 州・地区に関する国会資料
- SCA Coffee Standards(SCAの規格一覧)
- World Bank — Zambia coffee sector document(ムバラ・ノコンデの栽培史)
- U.S. Embassy Lusaka cable 07LUSAKA1016(ZCGAの生産統計)
- World Coffee Research — SL28
- World Coffee Research — Catimor 129
- Mafinga Town Council — マフィンガ地区の概要(最高地点2,339m)
- Olam Specialty Coffee — Zambia NCCL 2020 Estates booklet(ンスンズ農園の収穫・出荷期)
よくある質問
- ザンビアのコーヒーはどこで作られていますか?
- 北部のノーザン州(カサマ・ムバラなど)と、2011年に新設されたムチンガ州(ノコンデ・イソカ・マフィンガなど)にかけての北東部が中心です。ノコンデ・イソカ・マフィンガは、2011年以降はムチンガ州に属します(ムチンガ州政府・国会の資料)。
- ザンビアのコーヒーはどんな味ですか?
- 販売店の産地紹介では、ウォッシュドのロットがレモンなどの柑橘とダークチョコレートが重なるクリーンな味と紹介されています。国全体に共通する風味の特徴を示す一次資料は確認できていません。
- ザンビアではいつからコーヒーが栽培されていますか?
- 世界銀行の資料によると、1920〜40年代にムバラで商業栽培が行われ、1954年にノコンデで小農家による天水栽培が再開し、1959年に研究が始まりました。
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