
ブラジル エスピリトサント州(コニロン)
Incaperによればブラジルのコニロンの約70%を生む州、エスピリトサント
エスピリトサント州は、州の農牧研究普及機関Incaperによればブラジルのコニロン(ロブスタ)の約70%を生産し、世界のロブスタ供給の最大約2割を担う産地。州北部の標高200〜600mのコニロン産地と500〜1,400mの高地アラビカ地区が併存し、1912年にガボン経由で導入されたとされるコニロンは、INCAPERがクローン品種の開発・普及を重ねてきた
産地情報
| 産地 | ブラジル・エスピリトサント州(州北部の低地のコニロン産地) |
|---|---|
| 品種 | コニロン種(Conilon/ロブスタ種=カネフォラ種の一系統) |
| 標高 | 200〜600m(高地アラビカ地区は500〜1,400m) |
| 味わい | ダークチョコレート・ローストアーモンド・カラメル・力強いボディと穏やかな酸味当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。 |
品種情報
品種:コニロン(Conilon)
コニロンはロブスタ種(コーヒーノキ属カネフォラ種)のブラジルにおける呼称。名称はコンゴのクイル川(Kouilou)流域に由来するとされる。エスピリトサント州立農牧研究普及機関INCAPER(旧EMCAPER)は収量・さび病耐性・果実の粒揃いなどを基準に選抜育種を重ね、Emcapa 8111/8141「ロブストン・カピシャバ」/Emcaper 8151「ロブスタ・トロピカル」、Vitória Incaper 8142、ES 8122「ジェキチバ」など複数のクローン品種を開発・普及してきた。低標高(200〜600m)の高温多湿な気候に強く、機械収穫にも適応しやすい
- ブラジル国内のコニロン生産の約70%をエスピリトサント州が占める(Incaper)
- INCAPERが開発した複数のクローン品種を組み合わせて栽培
- 低標高でも安定収量、さび病耐性が高く機械収穫に適応
- 同じ州内にアラビカ高地産地「モンタニャス・ド・エスピリトサント」も併存
エスピリトサント州のコニロンとは
エスピリトサント州は、ブラジル南東部の大西洋沿岸に位置するミナスジェライス州・バイーア州に挟まれた小さな州です。国土面積では主要産地の中でも小規模ながら、ブラジル全体のロブスタ(コニロン)生産の約70%を占め、世界のロブスタ供給の最大約2割を担う一大産地となっています(Incaper)。州内は大きく2つの産地に分かれ、北部の低地一帯(標高200〜600m。州の農牧研究普及機関Incaperの区分では北西部・北東部)でロブスタ種のコニロンが、州南部の山岳地帯「モンタニャス・ド・エスピリトサント(Montanhas do Espírito Santo)」(標高500〜1,400m)ではアラビカ種が栽培されています。同じ州の中に低地ロブスタと高地アラビカという対照的な産地が共存しているのが最大の特徴です。
導入の経緯——ガボンから来た苗木
コニロンがエスピリトサント州に導入されたのは1912年とされます。当時の州知事ベルナルジーノ・モンテイロの下で、中央アフリカ・ガボンのリーブルビル植物園経由とされる苗木が持ち込まれ、1888年の奴隷制廃止後に流入した欧州系移民の小規模農家によって州北部で栽培が広がりました。低標高・高温多湿というアラビカには不向きな気候条件に強く、アラビカがさび病で打撃を受けた時期にも安定した収量を確保できたことから、20世紀を通じて州の主力作物として定着しました。
品質向上の潮流
かつてコニロンは大量生産・バルク輸出向けの安価な原料という位置づけが一般的でしたが、2000年代以降はINCAPERによる品種改良・栽培技術指導と、収穫・発酵・乾燥工程の見直しによって「スペシャルティ・コニロン」への転換が進んでいます。2021年には州南部の高地アラビカ産地「モンタニャス・ド・エスピリトサント」がブラジル国内で原産地呼称(DO)を取得したほか、同年にはコニロンも「カフェ・コニロン・ド・エスピリトサント(Café Conilon do Espírito Santo)」の名称で地理的表示(GI)に登録され(INPI)、産地としての品質基準づくりが進められています。
代表的な農園・協同組合
代表的な農園
- コアブリエル協同組合Cooabriel — Cooperativa Agrária dos Cafeicultores de Vila Velha
ブラジル最大のカネフォラ(ロブスタ/コニロン)系協同組合。州北部を中心とする組合員農家からの集荷・精選・品質管理・輸出を担い、州全体のコニロン産業を支える中核組織のひとつ
- ファゼンダ・ヴェントゥリンFazenda Venturim
コニロンの中でもパルプドナチュラルやウォッシュド精製に取り組む生産者。伝統的なバルク向けナチュラル一辺倒ではなく、精選方法を作り分けてクリーンなカップを狙うスペシャルティ志向のロブスタ生産者として知られる
- ペシン家農園Pessin Family Farm
州北部の一般的なコニロン産地(200〜600m)よりやや高い標高で、ウォッシュド精製のコニロンを生産。軽やかな果実感とほのかな酸を持つクリーンなカップとして取引先に紹介されている
精製方法
精製方法
ナチュラル
Natural / Dry Process
フルーティーで甘みが強い。ベリー系の発酵感とワインのような複雑さ
コニロンの精製は、収穫したチェリーをそのまま天日乾燥させるナチュラル(乾式)が伝統的に主流です。ブラジルの明瞭な乾季を活かし、パティオや乾燥棚に広げたチェリーを2〜3週間かけて乾燥させたのち脱穀します。近年は品質向上を狙う生産者を中心に、果肉除去後に乾燥させるパルプドナチュラルや、水洗発酵を経るウォッシュドを選択するケースも増えており、同じコニロンでも精製方法によってカップの印象が大きく変わる産地になりつつあります。
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
ハイ ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:90〜94℃(力強いボディをしっかり抽出する高め設定)
- 挽き目:中細挽き(エスプレッソ用途なら細挽き)
- 抽出方法:フレンチプレス・モカポット・エスプレッソ抽出推奨。ボディの厚みとカラメルの甘みが引き立つ
- 豆の量:14〜16g / 200ml(濃厚な仕上がりを狙う中〜やや多めの配合)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)に対し、本ブログではボディを活かす1:13〜1:14(14〜16g)を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)のうち高め90〜94℃を採用し、コニロンの持つ苦味とボディをしっかり引き出す
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
ブラジルの他の銘柄については、ブラジル サントスNo.2(伝統的な等級区分による標準銘柄)やブラジル セラード・ミネイロ(原産地呼称〈DO〉の産地)、ブラジル アルタ・モジアナも合わせてご覧ください。ロブスタ種の他産地はベトナム ブオンマトゥオットやコートジボワール マン山地も参考にどうぞ。
訂正(2026-09-27): コニロンの地理的表示を「コニロン・カピシャバ地区も地理的表示(GI)認定を受け」と記載していましたが、ブラジル産業財産庁(INPI)の公報では2021年のGIは「Café Conilon do Espírito Santo」の名称で登録されているため、登録名称を明記する形に改めました。また、州のシェアを「ブラジル全体のロブスタ(コニロン)生産の約70〜80%」「世界のロブスタ供給の約2割」と記載していましたが、州の農牧研究普及機関Incaperは州がブラジルのコニロンの約70%を生産し、世界のロブスタ供給の最大約20%を担うとしているため、「約70%」「最大約2割」に改め、Incaperの説明であることを明記しました。
訂正(2026-09-28): 州北部のコニロン産地を「コニロン・カピシャバ(Conilon Capixaba)地区」という地域名で記載していましたが、この名称の公的な地域区分・産地名は確認できず(「カピシャバ」はエスピリトサント州の人・州産を表す言葉です)、地理的表示の登録名も「Café Conilon do Espírito Santo」であるため、「州北部の低地のコニロン産地」に改めました。
訂正(2026-09-29): ブラジル セラード・ミネイロへのリンクに「ブラジル初のDO認証産地」と添えていましたが、ブラジル産業財産庁(INPI)の記録で確認できたのは2013年に原産地呼称(DO)として登録されたことで、「ブラジル初」は一次資料で確認できなかったため「原産地呼称〈DO〉の産地」に改めました。追加の照合で、ブラジル アルタ・モジアナへのリンクに「パルプドナチュラル発祥の地」と添えていましたが、アルタ・モジアナを起源とする一次資料は確認できなかったため、この添え書きを削除しました。
訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。
訂正(2026-10-16): 副題と説明文で「ブラジル最大のロブスタ産地」と記載していましたが、記事で示しているIncaperの説明は州がブラジルのコニロンの約70%を生産するというもので、表現をこの資料の範囲にそろえるため、副題を「Incaperによればブラジルのコニロンの約70%を生む州」、説明文を「州の農牧研究普及機関Incaperによればブラジルのコニロン(ロブスタ)の約70%を生産し」に改めました。副題の「コニロンが変える世界の一杯」と、説明文の「INCAPERの改良を経てスペシャルティへ質を高めている」は一次資料で確認できない評価の表現のため削除し、説明文は「INCAPERがクローン品種の開発・普及を重ねてきた」に改めました。あわせて、説明文の「1912年にガボン経由で導入された」を、本文の記述にそろえて「1912年にガボン経由で導入されたとされる」に改めました。あわせて、ペシン家農園の紹介で「軽やかな果実感とほのかな酸を持つクリーンなカップを実現し、コニロンでも標高と精製次第で繊細な風味を引き出せることを示す事例として取引先に紹介されている」と記載していましたが、標高と風味の因果を示す一次資料は記事で示していなかったため、「軽やかな果実感とほのかな酸を持つクリーンなカップとして取引先に紹介されている」に改めました。
訂正(2026-10-17): 淹れ方のポイントで「ロブスタ種は可溶性成分がアラビカより多く濃度が出やすいため」と記載していましたが、これを示す一次資料を記事で挙げていなかったため削除し、「本ブログではボディを活かす1:13〜1:14(14〜16g)を採用」に改めました。
参考文献・情報ソース
- USDA FAS — Coffee Annual: Brazil (2025)
- Daily Coffee News — Brazil Coffee Report: Robusta Filling In for Lower Expected Arabica Output
- INCAPER — Selo de Indicação Geográfica é concedido ao Café Montanhas do Espírito Santo
- Green Coffee Brazil — Café Conilon Capixaba
- SBICafé (UFV) — Variedades clonais de café Conilon para o Estado do Espírito Santo
- Belco — Brazil Robusta Espirito Santo Capixaba Conilon (Pessin Family Farm)
- List + Beisler — Brazil Robusta Conilon Washed, Fazenda Venturim
- Reuters (via wire syndication) — Robusta crop in Brazil's Espirito Santo state expected to dip, Cooabriel says
- SCA Coffee Standards
- INPI — Revista da Propriedade Industrial nº 2627: Indicações Geográficas(Café Conilon do Espírito Santo の登録)
- Incaper — Sooretama recebe Dia de Campo Café Conilon(州のコニロン生産シェア約70%・世界のロブスタ供給の最大約20%)
- INPI — 地理的表示「Espírito Santo」(Café Conilon)登録証
- Incaper — Cafeicultura Conilon(地域区分 Noroeste/Nordeste)
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