
インド アラクバレー
東ガーツ山脈の丘陵で部族農家が育てる、GI登録のアラビカ
アンドラ・プラデシュ州アラク渓谷のアラビカは、2019年に地理的表示(GI)「アラクバレー・アラビカ」として登録された NGOナーンディ財団の支援を起点に部族農家の協同組合が生産を担い、ブランド「アラクコーヒー」として輸出されている
この記事の要点
- 産地はアンドラ・プラデシュ州アルルリ・シタラマラジュ県のアラク渓谷、東ガーツ山脈の丘陵地帯
- 2019年に「アラクバレー・アラビカ」がGI登録簿に登録(登録番号334、申請者はインド・コーヒーボード、対象はアンドラ・プラデシュ州とオディシャ州)
- ナーンディ財団の説明では1999年に植樹・栽培支援を開始、現在は部族農家の協同組合が生産を担う
- S.795はKent種とS.288種の交配からCCRI(中央コーヒー研究所)が育成し、インド・コーヒーボードによれば1940年代にリリースされた品種
- インド・コーヒーボードの2023/24年度データでは、アンドラ・プラデシュ州はインド国内コーヒー生産州の第4位、州のアラビカ生産量は約12,170トン
産地情報
| 産地 | インド・アンドラ・プラデシュ州アルルリ・シタラマラジュ県 アラク渓谷、東ガーツ山脈の丘陵地帯 |
|---|---|
| 品種 | S.795(Sln.795)・セレクション9(Sln.9)系統 |
| 標高 | 一次資料で未確認 |
| 味わい | ジャグリー(粗糖)の甘みとダークカカオ、爽やかな柑橘系の酸、まろやかなボディ当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。 |
品種情報
品種:S.795(Sln.795、Kent種とS.288種の交配、1940年代リリース)・セレクション9(Sln.9)系統
アラク渓谷ではS.795やセレクション9系統のアラビカが栽培される カルダモンや在来樹種と混作するアグロフォレストリー方式で、単一作物の畑ではなく森林の一部として栽培される点が渓谷全体の特徴
- S.795Kent種とS.288種の交配からCCRIが育成し、1940年代にリリースされた品種
- 在来樹種・フルーツ樹(グアバ・サポジラ等)との混植により土壌の水分保持力を高めるアグロフォレストリーが標準的な栽培方式
- ブランド「アラクコーヒー」自社ロットを85点以上のカッピングスコアを満たすスペシャルティ規格として選別している
インド アラクバレーとは
アラク渓谷は、インド南東部アンドラ・プラデシュ州アルルリ・シタラマラジュ県(旧ヴィシャーカパトナム県)に位置する東ガーツ山脈の丘陵地帯です。「アラクバレー・アラビカ」は2019年にGI(地理的表示)として登録されました。登録機関は商工省産業国内取引促進局(DPIIT)の下にある特許意匠商標総局(CGPDTM)のGI登録所で、IP IndiaのGI登録簿では登録番号334、日付は2019年3月1日、申請者はインド・コーヒーボード、対象地域はアンドラ・プラデシュ州とオディシャ州です。栽培地の標高範囲は、一次資料では確認できていません。
この地域はアディヴァシ(先住部族)が多く暮らす地域で、コーヒー栽培は長らく仲買人を通じた低価格取引に依存していました。転機は、NGOナーンディ財団が「村の収入をどう上げるか」という問いから、放置されていたコーヒーの木に着目したことに始まります。財団の説明では、1999年に植樹と農家へのアラビカ栽培研修を始めました(Naandi Foundation公式ブログ)。
現在この農家ネットワークは「Arakunomics」と呼ばれるモデルとして発信されています。ブランドの説明では、独立した小規模農家が協同組合として結束し、世界市場価格を上回る買取価格が保証されているとしています(Araku Coffee公式サイト「Arakunomics」。フェアトレードやダイレクトトレードといった価格保証の仕組み全般はフェアトレードとダイレクトトレード、生産者に届く金額はどう違うのかで扱っています)。国全体で見ると、インド・コーヒーボードの2023/24年度データでは、アンドラ・プラデシュ州はインドのコーヒー生産州で第4位、同州のアラビカ生産量は約12,170トン(ロブスタは約40トン)です。
代表的な農園・協同組合
代表的な農園
- ナーンディ財団支援 部族農家協同組合Naandi Foundation-supported Tribal Farmer Cooperative
財団の説明では1999年に植樹・栽培研修を開始 現在は「Arakunomics」モデルの下で部族農家の協同組合として組織されている(Naandi Foundation公式)
- ギリジャン協同組合公社Girijan Cooperative Corporation (GCC)
州政府が運営する指定部族向け協同組合公社 アラク渓谷を含む部族地域産のコーヒーなど林産物・農産物の集荷・販売を担い、生産者の市場アクセスを支援する(The Federal報道)
- アラクコーヒー(ブランド)Araku Coffee / Araku Originals
カッピングスコア85点以上をスペシャルティ規格として選別し、フランス・パリで販売するブランド 世界市場価格を上回る買取保証を「Arakunomics」として掲げる(Araku Coffee公式)
精製方法
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
アラクバレーはファーメント・ウォッシュド(発酵水洗式)が主力。 ブランド資料ではS.795種のウォッシュドロットが「甘み・酸味・ボディのバランスが取れたプロファイル」と説明され、ジャグリー(粗糖)やミルクチョコレート、柑橘系の風味を引き出すとされる一方、一部ロットはウォッシュドとナチュラルをブレンドしライトミディアムのオムニロースト向けに仕立てられる(Araku Coffee公式サイト製品ページ)。
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
シナモン ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜93℃
- 挽き目:中細挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ
- 豆の量:12g / 200ml(浅煎り〜中浅煎りで柑橘系の酸とジャグリーの甘みを引き立てる標準量)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)。浅煎りはやや高めの温度でしっかり抽出する
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
インドの他産地、ロブスタ優勢のインド クールグやタタコーヒー発祥のインド チクマガルルと飲み比べると、同じ国でも協同組合モデル・栽培標高・精製方法の違いがカップにはっきり表れます。アラクコーヒーが掲げる「カッピングスコア85点以上」という基準がスペシャルティコーヒー全体でどう位置づけられるかは、スペシャルティコーヒーとはで解説しています。
訂正(2026-09-29): 副題・説明文・要点・本文で、アラクを「世界最大級のバイオダイナミック(認証スペシャルティ)農園」と記載していましたが、これはブランド側の説明で、認証機関の登録などで裏付けを確認できなかったため削除しました。GIについて「インド政府知的財産局(DPIIT)が付与」と記載していましたが、IP IndiaのGI登録簿では、アラクバレー・アラビカはDPIITの下にあるCGPDTMのGI登録所に登録番号334として記載され、申請者はインド・コーヒーボード、対象地域はアンドラ・プラデシュ州とオディシャ州でした。登録機関と登録内容をこれに改めました。「GI認証上の標高定義は900〜1,100m」と、副題の「標高900m台」、標高欄・生産者欄の「900〜1,350m」は、登録簿を含む一次資料で確認できなかったため削除し、標高欄には未確認と明記しました。ナーンディ財団の事業について「最初の100万本の植樹」「40の村・1万人の農家」「2011年までに600万本以上」と、現在の協同組合を「約1万人」「1万人規模」と記載していましたが、財団やブランドの自己発信以外の一次記録で確認できなかったため削除し、1999年の開始は財団の説明として明記しました。「20年間で3,000万本以上の植樹」「水消費量を10年で36分の1に削減」は、測定の基準を示す一次資料が確認できなかったため削除しました。アンドラ・プラデシュ州の生産について「第4位」「アラビカ年間1.2万トン超(2024年)」と記載していましたが、インド・コーヒーボードのデータでは2023/24年度に第4位、アラビカ約12,170トンでした。年次を作物年度に改め、数値を改めました。S.795の「Kent種とS.288種の交配で1940年代リリース」は、World Coffee Research(交配とCCRIによる育成)とインド・コーヒーボード(1940年代のリリース)で確認できたため、出典に加えました。S.795を「主力品種」、セレクション9を「一部で栽培」とした比重と、「標高700mを超える幅広い高度帯でも品質を保てる」は一次資料で確認できなかったため削除しました。オーガニック・バイオダイナミック「認証ロットが中心」「認証を取得」の記述も、認証機関の記録を確認できなかったため、ブランドが掲げている内容であることがわかる表現に改めました。
訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。
参考文献・情報ソース
- ETV Bharat — Araku, Coorg & Wayanaad coffee varieties get GI tag(2019年のGI報道)
- Insights IAS — GI Certification for Five Varieties of Indian Coffee(PIBプレスリリース内容の解説記事)
- Naandi Foundation — Araku Valley coverage(財団による植樹・農家研修プロジェクトの説明)
- Araku Coffee — Arakunomics(ブランドの自己説明)
- The Federal — Araku coffee: How Andhra Pradesh govt, tribal farmers are taking organic beans global(GCC・生産統計)
- Agriculture Institute — Popular Arabica Coffee Varieties in India(S.795の交配来歴)
- IP India GI Registry — Araku Valley Arabica Coffee(登録番号334、申請者Coffee Board)
- Coffee Board of India — Database(2023/24年度の州別生産量)
- Coffee Board of India — Coffee Regions of India(S.795のリリース年代)
- World Coffee Research — S795
- SCA Coffee Standards(SCAの規格一覧)
よくある質問
- アラクバレーのコーヒーはどこで買えますか?
- 「アラクコーヒー(Araku Coffee)」ブランドがフランス・パリに直営店を構えるほか、インド国内・オンラインでも自社サイトや取扱店で購入できます
- GI認証と有機・バイオダイナミック認証は同じものですか?
- 別の制度です GI(地理的表示)は原産地・栽培地域を保証する制度で、アラクバレー・アラビカは2019年にインドのGI登録所(CGPDTM)に登録されました 一方オーガニック・バイオダイナミック認証は栽培方法を保証する制度で、アラクコーヒーはブランドとしてこれらを掲げていますが、認証機関の登録記録は一次資料で確認できていません
- なぜ「部族農家」が主役になっているのですか?
- アラク渓谷はアディヴァシ(先住部族)が多く暮らす地域で、伝統的に仲買人に買い叩かれる立場に置かれてきました ナーンディ財団の支援(財団の説明では1999年から)で農家自身が所有・出荷・利益配分に関わる協同組合モデルが構築され、貧困対策と結びついた産地として知られています
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