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モザンビーク ゴロンゴサ|コーヒーの味・産地・野生種ラセモサ

内戦を経た国立公園の山で、在来樹の下に育つアラビカと野生種ラセモサ

モザンビーク コーヒーはどんな味か。ゴロンゴサ国立公園の山で2015年に最初の種子が植えられたCatimor系コスタリカ95は、生産者などがウォルナットやマイヤーレモンのノートと紹介するカップ。Slow Food財団がハーブ香と低カフェインを紹介し、IUCNレッドリストで準絶滅危惧に評価される在来の野生種Coffea racemosaとあわせて解説します


産地情報

産地モザンビーク ゴロンゴサ山(ソファラ州)・キリンバス諸島イボ島(北部)
品種Catimor コスタリカ95・Coffea racemosa(在来の野生種)
標高約600m(ゴロンゴサ山で最初に種子を植えた標高)/racemosa自生地の調査地は多くが600m未満(一部780m)
味わいウォルナット・トースト・マイヤーレモン・ハーブ・ミルクチョコレート当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:Catimor コスタリカ95 / Coffea racemosa

モザンビークへのコーヒー導入はポルトガル植民地時代に遡るが、宗主国は隣国アンゴラを主要産地と位置づけ、モザンビークは茶の産地とされた。独立後の内戦(1977〜1992年)で農業インフラが壊滅し、長く「コーヒー空白地帯」だった。ゴロンゴサ国立公園のコーヒー事業は2013〜14年ごろに始まり、2015年に最初の種子が植えられ、2018年に初収穫を迎えた。公園の資料では800を超える家族が参加している(Gorongosa National Park)。並行して在来種 Coffea racemosa は北部イボ島に自生し、スローフード財団が2012年に「プレシディウム(守るべき食文化)」に認定している(Slow Food Foundation)

  • Catimor コスタリカ95(別名CR-95)はCaturra×ティモール・ハイブリッドを起源とするCatimor群の一品種で、葉さび病(CLR)・コーヒーベリー病(CBD)に高い耐性を示す(Perfect Daily Grind / Our Gorongosa 2021)
  • Coffea racemosa(ラセモサ)はモザンビーク中南部・ジンバブエ東部・南アフリカ北部に分布するコーヒー属の野生種で、調査地の多くは海抜600m未満(一部780mまで)。IUCNレッドリストの評価は準絶滅危惧(Near Threatened)。カフェイン含有量がアラビカの約半分(0.7〜0.9%)と低く、ローレル・ミント・ユーカリ・リコリスのハーブ香が特徴。かつてポルトガルはブラジルやサントメのブレンドに苦味緩和剤として使用し、20世紀初頭にヨーロッパへ輸出されていた(Slow Food Foundation / Espresso Barista)

モザンビーク ゴロンゴサとは

モザンビーク共和国はアフリカ南東部のインド洋沿岸国で、国土の大部分は低地と台地で構成されます。コーヒー栽培に適した高地はソファラ州のゴロンゴサ山(最高峰1,863m)周辺と、中部マニカ州のキマニマニ山地(ジンバブエ国境沿い)、および北部のザンベジア州・ニアッサ州の一部に限られます(Perfect Daily Grind 2021)。

コーヒーの歴史は複雑です。ポルトガル植民地時代、宗主国はアンゴラをコーヒーの主産地として育成し、モザンビークは茶の生産地と役割を分けられました。独立後の1977〜1992年の内戦でインフラが壊滅し、コーヒー産業は実質的に失われます。2000年代以降も大型サイクロン(ケネス2019年、エロイズ2021年)が農業に打撃を与え続けてきました(Perfect Daily Grind 2021)。

転機となったのがゴロンゴサ国立公園の保全と農業の融合です。2008年に公園の官民連携による管理を始めたゴロンゴサ復元プロジェクト(GRP)が、2013〜14年ごろにコーヒー事業を立ち上げ、国立公園の緩衝地帯に住む農家とともに、在来の樹木の下でアラビカを育てるアグロフォレストリーを進めました。公園の資料によると、2015年に標高約600mで最初の種子が植えられ、2018年に初収穫(約6t)を迎えています。ゴロンゴサ山域の調査では82種の鳥類が記録されています(コーヒー農園に限った数ではありません。Gorongosa National Park)。

栽培されるのはCatimor系コスタリカ95(CR-95)で、山麓でシェードグロウン農法によって栽培されます。「ウォルナット・トースト・マイヤーレモン」のノートが特徴的な中煎り向きのカップです(Our Gorongosa 2021 / Perfect Daily Grind)。

一方、北部のキリンバス諸島イボ島には全く異なるコーヒーが存在します。在来種 Coffea racemosa は砂とサンゴ礁が混じる貧栄養土壌に自生し、乾季(最長9か月)に耐え、ほぼ無農薬で育ちます。カフェイン量はアラビカの約半分、風味は「ローレル・ミント・ユーカリ・リコリス」の強いハーブ香が支配的で、伝統的に家庭の庭に1〜2本植えられ手作業で収穫・天日乾燥されてきました(Slow Food Foundation 2012)。研究では、この種はモザンビーク中南部からジンバブエ東部・南アフリカ北部にかけて分布し、調査地の多くは海抜600m未満(一部780mまで)と報告されています。国境を越えた南アフリカでも小規模ながら商業栽培が試みられています。

ICO(国際コーヒー機関)は2023年6月13日、モザンビークの加盟を発表しました。これは同国のコーヒー産業が国際貿易の土俵に上がる意思表示であり、ゴロンゴサ・キマニマニ両プロジェクトの輸出拡大を後押しする動きとして注目されています(ICO Press Release 2023)。


代表的な農園・生産組織

代表的な農園

  • ゴロンゴサ・コーヒー・プロジェクト(Our Gorongosa)Gorongosa Coffee Project / Our Gorongosa (Produtos Naturais da Gorongosa)
    📍 ソファラ州ゴロンゴサ山麓(カンダ・タンバラーラ・サンドゥンジーラ地区)⛰️ 約600m(2015年に最初の種子を植えた標高)

    ゴロンゴサ復元プロジェクト(GRP)が2013〜14年ごろに始めたコーヒー事業。湿式ミル3基(カンダ・タンバラーラ・サンドゥンジーラ)と共同乾燥ミル1基、農場内焙煎所・包装ラインを整備する。公園の資料では、生産量は2018年約6t、2019年8t、2020年12t(2021年は19tの予測)。800を超える家族が参加し、米国向けに6tを輸出した。2025年の公園報告では484ha・1,623生産者。ウォルナット・トースト・マイヤーレモンのシングルオリジンが米国スペシャルティ市場向けにリリースされた(Gorongosa National Park / Our Gorongosa)

  • カフェ・デ・マニカ(Agrotur)Café de Manica / Agrotur
    📍 マニカ州キマニマニ国立公園周辺

    マニカ州のキマニマニ国立公園周辺でコーヒー栽培に取り組む事業体(Daily Coffee News 2023)。創業年・参加農家数・栽培面積・国内での規模の順位は、公的資料や当事者の一次資料で確認できていない

  • イボ島ラセモサ生産者グループ(スローフード・プレシディウム)Ibo Coffee Producers — Slow Food Presidium
    📍 北部カーボ・デルガード州キリンバス諸島イボ島⛰️ 海面〜低地(砂浜・サンゴ礁土壌)

    スローフード財団が2012年に「プレシディウム」として認定。約30人の生産者が家庭の庭に1〜2本の Coffea racemosa を保全・収穫する。サンゴ礁混じりの貧栄養土壌に適応した在来種で、11〜12月収穫・竹とジュートの棚で天日乾燥・手剥きという伝統製法を維持する。かつてイリーカフェ(illycaffè)とイタリア政府・モザンビーク政府が保全投資に合意した実績を持つ(Slow Food Foundation / Perfect Daily Grind)


精製方法

精製方法

☀️

ナチュラル

Natural / Dry Process

1
収穫→
2
そのまま乾燥→
3
(長期間)→
4
脱穀
ボディ
4/5
クリアさ
2/5
発酵感
5/5

フルーティーで甘みが強い。ベリー系の発酵感とワインのような複雑さ

イボ島の racemosa はナチュラル。ゴロンゴサ産の主な精製方法は公式資料で確認できていない。 ゴロンゴサのプロジェクトには湿式ミル3基が整備されており、栽培は在来樹の下で育てるシェード栽培(アグロフォレストリー)で行われる。イボ島の Coffea racemosa は11〜12月に手摘みした後、竹製の棚に広げて完全乾燥させ手剥き処理するという、何世代も続く伝統的なナチュラル製法を踏襲する(Slow Food Foundation / Gorongosa National Park)。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づく編集上の目安です。特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。


おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いモザンビーク ゴロンゴサエチオピア イルガチェフェタンザニア キリマンジャロケニア AAジンバブエ 東部高地ブラジル サントスNo.2インドネシア マンデリンG1

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜92℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ・エアロプレス
  • 豆の量:12g / 200ml(中煎りでウォルナットとレモンのバランスを引き出すなら90℃前後が最適)

基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)。中煎りのゴロンゴサはやや低温寄り(88〜92℃)でシトラス酸を引き出しやすい
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

目的別に次に読む


訂正(2026-09-29): Coffea racemosaについて「モザンビーク〜南アフリカ北東部の約150km²の森林帯にのみ自生」「自生域は南へ約150km²の帯状に広がる」「海面〜1,500m(racemosa自生域)」と記載していましたが、研究論文で確認できたのは、モザンビーク中南部・ジンバブエ東部・南アフリカ北部に分布し、調査地の多くが海抜600m未満(一部780mまで)であることでした。分布と標高をこの記載に改め、分布面積は一次資料で確認できなかったため削除しました。あわせて、分布が3か国にわたるため「固有種」を「在来種」「野生種」に改め、「世界最希少種」「世界屈指の希少種」の表現を外しました。「2023年6月、モザンビークはICOに正式加盟し、国際コーヒー協定(ICA 2022)に署名」と記載していましたが、ICOのプレスリリースで確認できたのは2023年6月13日の加盟の発表で、署名と加盟を同じ出来事として書いていたため、日付を明記して加盟の発表に改めました。ゴロンゴサのコーヒー事業について「2014年に設立」「1,000人以上(1,000人超)の農家」「200ha以上」「2021年に8トンの生豆を初輸出」「8年後に自然林に60%近似した生態系」「82種の鳥類と固有コウモリが生息」と記載していましたが、ゴロンゴサ国立公園の公式資料では、事業は2013〜14年ごろに始まり、2015年に標高約600mで最初の種子を植え、2018年に初収穫(約6t)、2019年8t、2020年12tで、参加は800を超える家族、米国向け輸出は6tとされ、82種の鳥類は農園ではなく山域の調査の値であるため改めました。60%の森林類似度は別の研究の指標で、固有コウモリは確認できなかったため削除しました。「標高650〜935m」「QグレーダーによるSCAスコア82〜83点」「ゴロンゴサでテストされた7品種」は公園の一次資料で確認できなかったため削除しました。カフェ・デ・マニカの「2019年創業」「2,300人以上の農家」「2,500ha」「モザンビーク最大の農園群」「7品種」「オーガニック」は公式資料で確認できず、公園の資料(2025年に484ha・1,623生産者など)とも規模が整合しないため削除しました。「ゴロンゴサ産はナチュラルが主流」「農薬・化学肥料を使わないオーガニック農法が前提」も確認できなかったため削除しました。Coffea racemosaについて、IUCNレッドリストの評価(準絶滅危惧)を追記しました。

訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。

訂正(2026-10-16): 副題で「内戦後の大地で蘇る——希少な野生種ラセモサと、森林再生を担うアラビカが共存する新フロンティア」と記載していましたが、「蘇る」「新フロンティア」は一次資料で確認できない評価の表現で、「希少な」は記事の訂正(2026-09-29)で「世界最希少種」などを外したのと同じく一次資料で確認できない表現、「森林再生を担う」も記事本文で一次資料にもとづいて示していない内容のため、「内戦を経た国立公園の山で、在来樹の下に育つアラビカと野生種ラセモサ」に改めました。あわせて、説明文で「ウォルナット&レモンのカップ。ハーブ香と低カフェインで知られ」と風味を事実のように記載していましたが、本文の出典に合わせ、「生産者などがウォルナットやマイヤーレモンのノートと紹介するカップ。Slow Food財団がハーブ香と低カフェインを紹介し」に改めました。


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