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スリナム コメウィネ川流域

18世紀オランダ植民地の遺産——コメウィネ川沿いの農園が守るコーヒー史

カリブ海沿岸の小国スリナムでは18世紀のオランダ植民地時代にコーヒー栽培が広がった。奴隷制廃止後に多くの農園が消え、カトウィーク農園が今も稼働するアラビカ・リベリカ産地


産地情報

産地スリナム・コメウィネ県(コメウィネ川沿岸低地)
品種アラビカ種・ロブスタ種・リベリカ種
標高10〜30m(海岸平野部)
味わいまろやかなチョコレート・ナッツ・穏やかな甘み・低酸度当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:KWアラビカ(Coffea arabica)

18世紀にオランダ植民地ルート(アムステルダム経由)でスリナムに持ち込まれたアラビカ種。カトウィーク農園では現在もアラビカとロブスタを2本柱で栽培し、スペシャルティ向けの看板商品は『KWアラビカ』として100%アラビカで提供される。チョコレートとナッツの風味が前面に出る、まろやかで飲みやすいカップが特徴。同農園ではアフリカ西部原産のリベリカ種(Coffea liberica)も栽培されている

  • 海岸平野部(標高10〜30m)の低地での栽培
  • カトウィーク農園がスリナムで唯一稼働するコーヒー農園として紹介される
  • アラビカ・ロブスタに加えリベリカ(Coffea liberica)も栽培する産地
  • 18世紀のオランダ植民地時代に栽培が広がった歴史的な産地

スリナムのコーヒーとは

スリナム(Suriname)はカリブ海に面した南アメリカ北東部の小国で、18世紀のオランダ植民地時代にはコーヒーがヨーロッパへ輸出されていた。現在の主産地は首都パラマリボに隣接する コメウィネ県(Commewijne District) で、緩やかに流れるコメウィネ川の南岸に国内唯一の稼働農園が残る。

国土の約90%が熱帯雨林で覆われ、コーヒー生産地としては極めて低い海抜 10〜30m の平野部がメインの栽培エリアとなっている。

コーヒー産地への道(18世紀)

コーヒーがスリナムに到達した年は資料によって異なり、一次資料では確定できていない。アムステルダム市公文書館は、ジャワ由来のコーヒーの苗がアムステルダムの植物園(Hortus)を経てスリナムへ送られたと説明している。20世紀初頭に編まれたオランダ領西インドの百科事典(DBNL所収)は、1718年9月の試験的な送付、1721年の約50ポンド、1723年の5,920ポンドの輸出を記録している。その後コメウィネ川沿いの肥沃な土地に次々と農園が開かれ、18世紀には数多くの農園がコーヒーや砂糖、カカオを生産し、ヨーロッパ向けの重要輸出品となった。

近隣の出来事として知られるのが、ブラジルへのコーヒー伝播だ。1727年、フランシスコ・デ・メロ・パリェタが仏領ギアナからコーヒーの種子を持ち出し、ブラジルへ持ち込んだとされる(Oxford Research Encyclopedia)。持ち出し元はスリナムではなく仏領ギアナで、スリナムとは年代・経路とも別の出来事になる。今日の世界最大のコーヒー生産国ブラジルへのコーヒー伝来は、こうしたギアナ地方の植民地栽培とつながっている。

衰退と生き残り(19〜20世紀)

スリナムのコーヒー産業は 1863年の奴隷制廃止 で大きな転換を迎えた。農園労働を支えていた奴隷が解放されると、大多数の農園は維持困難となり急速に閉鎖。かつて数多くあった農園のうち、今日まで商業生産を続ける農園は カトウィーク(Katwijk)1か所だけ となった。

カトウィークは植民地時代にさかのぼる農園とされ、複数のオーナーを経て、現在はブランド名「KWコーヒー(KW Koffie)」として国内市場を中心に販売を続けている。

現在の生産と復興への取り組み

現在の生産はごく小規模で、オランダのコーヒーブランド「King Coffee」が、同社の説明によればカトウィーク農園での生産体制の再構築に取り組んでいる。同じ南米北東部の小規模産地としては隣国ガイアナ ポメルーンもあり、旧オランダ・イギリス植民地圏の栽培史を共有する。アラビカ・ロブスタに加え、リベリカ種の栽培 も取り組みに含まれている(リベリカの代表産地はフィリピン バタンガス)。


代表的な産地・生産者

代表的な農園

  • カトウィーク農園(KWコーヒー)Plantage Katwijk (KW Koffie)
    📍 スリナム・コメウィネ県アルクマール地区(コメウィネ川南岸)⛰️ 10〜30m

    スリナムで唯一稼働するコーヒー農園として紹介される。看板ブランド「KWコーヒー」を展開し、アラビカ・ロブスタ・リベリカを栽培する

  • King Coffee × カトウィーク再興プロジェクトKing Coffee × Katwijk Revitalization
    📍 スリナム・コメウィネ県(カトウィーク農園)⛰️ 10〜30m

    オランダのKing Coffeeが、同社の説明によればカトウィーク農園で生産体制を再構築する現在進行中のプロジェクト。スリナムと蘭の雇用創出・技術教育も目的に含む。リベリカ種の商業復活と品質向上を通じ、国際スペシャルティ市場への参入を目指している


精製方法

ウォッシュドが主体。 カトウィーク農園では伝統的なオランダ植民地時代の精製手法を受け継ぎ、チェリーの果肉を除去してから発酵・水洗いを行うウォッシュド製法を基本とする。

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫→
2
果肉除去→
3
水洗い・発酵→
4
乾燥→
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づく編集上の目安です。特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。


おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いスリナム コメウィネ川流域ブラジル セラードベネズエラ メリダコロンビア ウィラエチオピア イルガチェフェインドネシア マンデリンG1

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜92℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップまたはフレンチプレス(まろやかなコクを活かせる)
  • 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → チョコレートの甘みと柔らかな口当たりが際立つ、14g → ナッツのコクと厚みが増す)

基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

訂正(2026-09-29): コーヒーの導入年を「1718〜1719年頃」(品種の説明)と「1712〜1718年頃」(本文)と食い違って記載していましたが、導入年は資料間で一致せず一次資料で確定できなかったため、年を外し「18世紀にアムステルダム経由で持ち込まれた」としました(アムステルダム市公文書館は、ジャワ由来の苗がアムステルダムの植物園を経てスリナムへ送られたと説明しています)。導入の主体を「オランダの東インド会社(VOC)」と記載していましたが、一次資料で確認できなかったため削除しました。農園の数を「600を超える農園」「600以上の農園が消え」「かつて200〜600あった農園」と記載していましたが、数が記事内で食い違い、コーヒー農園の数と年次を一次資料で確認できなかったため、数字を外し「数多くの農園」「多くの農園」に改めました。追加の照合で、1727年にブラジルへコーヒーを持ち込んだパリェタを「ポルトガルの外交官」とし、スリナムを「ブラジルのコーヒー産業誕生の起点」と記載していましたが、Oxford Research Encyclopediaなどでは種子の持ち出し元は仏領ギアナとされ、スリナムを起点とする根拠は確認できなかったため、肩書と「起点」の記述を削除し、スリナムとは別の出来事として書き分けました。あわせて、20世紀初頭のオランダ領西インド百科事典(DBNL所収)に記録された1718年9月の試験的な送付、1721年の約50ポンド、1723年の5,920ポンドの輸出を追記しました。カトウィーク農園の「1746年設立」「1970年代初頭からノウ=シャイア家族の経営」「第二次世界大戦中の日本軍捕虜収容所」「1979年の焙煎工場建設」「2012年からのヘリテージツーリズム」、年間生産量「約6,000〜12,000kg(世界ランク第71位)」、King Coffeeとワーヘニンゲン大学の連携と「約18ヘクタール」、「3種のコーヒーが育つ唯一の農園」「世界的にも稀有な産地」「北欧市場向けリベリカの輸出」は、いずれも一次資料で確認できなかったため削除しました。

訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。

訂正(2026-10-15): 説明文と本文でスリナムを「18世紀に世界有数のコーヒー産地だった」と記載し、見出しを「世界的コーヒー産地への道」としていましたが、当時の産地どうしの生産量・輸出量を比べた一次資料を確認できなかったため、比較の表現を削除し、記事で示している輸出の記録(百科事典〈DBNL所収〉の1721年・1723年の輸出量)と合う「コーヒーがヨーロッパへ輸出されていた」に改めました。

訂正(2026-10-16): 品種欄で「海岸平野部という低地環境では熟成が速く、高地産と比べて酸味は控えめ」「海岸平野部(標高10〜30m)という低地栽培が生む控えめな酸味とまろやかなコク」、本文で「高地産コーヒーとは異なる、柔らかくまろやかな風味が特徴だ」、精製方法の節で「低地環境下でも豆本来のチョコレート・ナッツの風味を損なわず引き出すための丁寧な仕上げが特徴だ」と記載していましたが、標高と風味の因果を示す一次資料は記事で示していなかったため、品種欄の特徴を「海岸平野部(標高10〜30m)の低地での栽培」に改め、ほかの記述は削除しました。


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