
ベトナム ソンラ
ベトナム北西部の山岳地帯に広がるアラビカ産地
1990年代前半から大規模栽培が広がったベトナム北西部ソンラ省のアラビカ産地(2023/24年度のコーヒー栽培面積は20,708ha、省の報道)と、ビッチャオ協同組合のハニープロセスによる付加価値化の事例を紹介
この記事の要点
- 産地はベトナム北西部ソンラ省、旧マイソン郡・旧トゥアンチャウ郡・旧ソンラ市(2025年7月の行政再編前の区分)が中心
- 2022年の地元報道によると、大規模なアラビカ栽培が始まってから約30年(1990年代前半から)
- ソンラ省のコーヒー栽培面積は2023/24年度に20,708ha(省の報道。アラビカに限った面積は未確認)。全国のアラビカ栽培面積に占める割合は一次資料で未確認
- 品種はカティモールが輸入業者に紹介されている(品種ごとの割合と標高の範囲は一次資料で未確認)
- ビッチャオ協同組合はハニープロセスを導入し、2020年に国家OCOP五つ星認証を取得
産地情報
| 産地 | ベトナム・ソンラ省(旧マイソン郡・旧トゥアンチャウ郡・旧ソンラ市) |
|---|---|
| 品種 | アラビカ種(カティモールなど。品種ごとの割合は一次資料で未確認) |
| 標高 | 一次資料で未確認(北西部の山岳地帯) |
| 味わい | カラメル・はちみつ・ブラウンシュガーの甘み、バランスの良い酸味、しっかりしたボディ当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。 |
品種情報
品種:カティモール種
カティモールはさび病耐性を持つカトゥーラとチモール・ハイブリッドの交配種。輸入業者(StoneX)はベトナムのアラビカを主にカティモールと紹介しているが、ソンラに限った品種構成と品種ごとの栽培の割合は一次資料で確認できていない。ラムドン省の歴史資料では、ベトナムへの耐病性品種の導入は1986年とされる(カティモール自体の導入年・経路は未確認)。2022年の地元報道によると、ソンラで大規模なアラビカ栽培が始まってから約30年になる
- 1990年代前半から大規模な栽培が広がった(2022年の地元報道)
- 2023/24年度のコーヒー栽培面積20,708ha(省の報道。アラビカに限った面積は未確認)
- ソンラでの品種ごとの割合一次資料で未確認
- ビッチャオ協同組合がハニープロセスを導入し、2020年に国家OCOP五つ星認証
1990年代に広がったアラビカ産地
ベトナムはブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国で、生産量の約96%をロブスタ種が占めます(USDA FASの2025/26年度見通し:全体3,170万袋のうちロブスタ3,050万袋)。中央高地ダクラク省を中心とするロブスタ農園が生んだ濃厚な苦味とカフェ・スア・ダ文化は、ベトナム ブオンマトゥオットの記事で紹介した通りです。
その例外がラムドン省と、この記事で扱う北西部ソンラ省です。2022年の地元報道(VietnamPlus)は、ソンラで大規模なアラビカ栽培が始まってから約30年と伝えており、1990年代前半から栽培が広がったことになります。開始の具体的な年や、どの事業・地区から始まったかは、公的資料では確認できていません。
ソンラ省の報道によると、省のコーヒー栽培面積は2023/24年度に20,708haで、前年度から1,872ha増えました(アラビカに限った面積は確認できていません)。全国のアラビカ栽培面積に占める割合は、報道などで値が異なり、一次資料で確認できていません。主な栽培地は旧マイソン郡・旧トゥアンチャウ郡・旧ソンラ市で、ベトナム ダラットを擁するラムドン省とともにアラビカの主産地です。なお2025年7月の行政再編で郡級の行政単位は廃止されたため、ここでの郡・市の名は再編前の区分です。産地の標高の範囲は、一次資料で確認できていません。
産地の特徴
代表的な農園
- ビッチャオ・コーヒー協同組合Bich Thao Coffee Cooperative
約300戸・計約1,000haの契約農家を抱える協同組合。自社開発のパルパー(2016年導入)と米国・ドイツの技術指導によりハニープロセスを導入。2020年に国家OCOP五つ星認証を取得し、輸出も手がける
- フックシン ソンラPhuc Sinh Son La Corporation
ベトナム大手コーヒー企業フックシンのソンラ拠点。地域の協同組合・農家と連携し、有機農法や生物多様性保全に配慮した栽培・精製を進め、欧州・日本向けの品質基準に対応する
- 旧マイソン郡・旧トゥアンチャウ郡の小規模農家
旧マイソン郡・旧トゥアンチャウ郡・旧ソンラ市が主要な栽培地区。土壌や気候と味わいの関係は一次資料で確認できていない
精製方法とハニープロセスの革新
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
ソンラでは伝統的にウォッシュド精製が主流ですが、ビッチャオ協同組合は2016年、米国・ドイツの技術者の指導を受けて自社製パルパーを開発し、ハニープロセスを導入しました。果肉を除去した後、粘液質(ミューシレージ)を一部残したまま乾燥させることで、通常のウォッシュド豆より甘みと厚みのあるカップに仕上がります。VietnamPlusはハニー加工品(粉)を1kgあたり約22米ドル、ウォッシュドの豆を1kgあたり1.8〜2米ドルと報じていますが、製品の形態が異なるため、豆どうしの価格差として比べることはできません。副産物のカスカラ(コーヒーチェリーの果皮)も商品化されています。
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
ミディアム ロースト
カラメルやはちみつを思わせる甘みを引き出すため、浅煎り〜中煎りより中煎り〜中深煎りが向いています。
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃
- 挽き目:中挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ推奨
- 豆の量:13〜15g / 200ml(13g → 酸味と輪郭がやや際立つ、15g → カラメル系の甘みとボディを強調)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
目的別に次に読む
- ベトナムのほかの産地と比べたい → ベトナムのコーヒー・ベトナム ダラット
- 近い東南アジアの産地と比べたい → ラオス ボラベン高原のコーヒー・タイ ドイトゥン
- カティモールがどんな品種か知りたい → コーヒー豆の品種一覧
- アジア・オセアニアの産地を一覧で見たい → アジア・オセアニアの産地
訂正(2026-09-29): アラビカ栽培の始まりを「1994年、荒れ山の緑化と貧困対策の政府事業としてフアラ地区で開始」と記載していましたが、2022年の地元報道(VietnamPlus)は大規模栽培の開始から約30年と伝えるにとどまり、開始年・事業名・起点の地区は確認できなかったため、「1990年代前半から大規模な栽培が広がった」に改めました。栽培面積「約2万ha」「ラムドン省と並ぶ二大産地」は、2023年の年次報告に基づき「2022/23年度に約1.88万ha、全国のアラビカ栽培面積の50.34%」に改めました。ビッチャオ協同組合の国家OCOP五つ星認証は2022年ではなく2020年(ソンラ省の公示)のため改め、「20カ国へ年間約6,000トンを輸出」は地元報道の加工量(4,000〜5,000トン)と整合しないため削除しました。「ハニー豆は約22米ドル/kgでウォッシュド豆の10倍以上」は、報道の22米ドルが粉の加工品の価格で豆とは比べられないため、形態の違いを明記して「10倍以上」を削除しました。確認できなかったTHA1の20〜30%増収とTHA1・TN1・TN7への転換、カスカラの価格も削除しました。ロブスタ比率「約95%」はUSDA FASの2025/26年度見通しに基づき約96%に、郡・市の名は2025年7月の行政再編で郡級行政が廃止されたため「旧〜」に改めました。ダラットの標高(1,450〜1,650m)は、ラムドン省の資料で下限を確認できなかったため削除しました。品種欄で「カティモールは1980年代にベトナムへ導入」と記載していましたが、ラムドン省の歴史資料で確認できたのは耐病性品種の導入が1986年であることまでで、カティモール自体の導入年は確認できなかったため、その範囲に改めました。
訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。
訂正(2026-10-14): ソンラ省のアラビカ栽培面積を、副題・説明文・要点・FAQ・品種欄・本文で「全国のアラビカ栽培面積の50.34%」「約半分」を占めると記載していましたが、Codexによる一次資料との照合(PR #389)でこの割合を確認できず、ほかの報道では約41%など異なる値が示されていたため、割合の記述を削除し、未確認と明記しました。あわせて、要点・基本情報・品種欄・本文・FAQ・代表的な生産者の欄で「主力品種はさび病耐性のカティモール」「カティモール中心」「標高700〜1,200m」「約900〜1,200m」と記載していましたが、ソンラでの品種ごとの栽培の割合と標高の範囲は一次資料で確認できなかったため、カティモールは輸入業者(StoneX)の紹介として示すにとどめ、標高の数値と、標高が冷涼な環境を生むとした記述を削除しました。あわせて、栽培面積を「2022/23年度に約1.88万ha(2023年の年次報告)」と記載していましたが、Codexの照合で、年次報告からアラビカに限ったこの値を確認できず、省の報道で確認できたのは2023/24年度のコーヒー全体の面積(20,708ha)だったため、改めました。StoneXの紹介はソンラに限らないベトナムのアラビカ全般の説明だったため、そのように改め、農園欄の土壌・寒暖差と味わいの因果の記述を外しました。
参考文献・情報ソース
- USDA FAS — Coffee Annual: Vietnam
- Nong Nghiep Moi Truong (Vietnam Ministry of Agriculture affiliated outlet) — Son La: A Decade of Climbing Hills [3] Vietnam's Major Coffee Arabica Pioneer
- VietnamPlus (Vietnam News Agency) — Cooperative Turns Son La Coffee into Profitable Business
- Helena Coffee Vietnam — Son La Coffee Farms, Son La Arabica Coffee
- StoneX Specialty Coffee — Our Origins(ベトナムのアラビカは主にカティモール)
- ソンラ省の報道(Báo Sơn La)— 2023/24年度のコーヒー栽培面積20,708ha
- Phuc Sinh Son La — Son La Coffee Farm Tour Experience
- World Coffee Research — Vietnam Country Profile
- VietnamPlus — Son La festival promoting coffee production (2022)
- Vietnam Coffee Annual Report 2023(VnSAT/農業農村開発省)
- Sơn La省 新農村事務局 — OCOP認定の公示
- ラムドン省 — ダラット地誌(コーヒー栽培の歴史)
- ベトナム政府 — 国会決議202/2025/QH15(省級行政単位の再編)
よくある質問
- ベトナムのコーヒーはロブスタばかりではないのですか?
- USDA FASの2025/26年度の見通しでは生産量の約96%がロブスタ種ですが、北西部のソンラ省と中南部のラムドン省ではアラビカが栽培されています。ソンラ省では1990年代前半から大規模な栽培が広がり、2023/24年度のコーヒー栽培面積は20,708haです(省の報道。アラビカに限った面積は未確認)
- ソンラのアラビカはダラットとどう違いますか?
- ソンラは北西部の山岳地帯の産地で、カラメルやはちみつを思わせる甘みとバランスの良い酸味、しっかりしたボディが特徴です。ダラット(ラムドン省の高原)はより穏やかな酸味とベリー系の軽やかな味わいで、同じベトナム産アラビカでも個性が異なります
- ハニープロセスとは何ですか?
- 果肉を除去した後、粘液質(ミューシレージ)を一部残したまま乾燥させる精製方法です。ソンラのビッチャオ協同組合は米国・ドイツの技術指導を受けて2016年から自社製パルパーでハニープロセスを導入し、付加価値化を進めています。VietnamPlusはハニー加工品(粉)を1kgあたり約22米ドル、ウォッシュドの豆を1kgあたり1.8〜2米ドルと報じていますが、製品の形態が異なるため単純には比べられません
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