
ベトナム ダラット
ロブスタが約96%を占める国で、ダラット近郊の高原で栽培されるアラビカ
生産量の約96%がロブスタというベトナムで、ダラット近郊の高原カウダットが持つアラビカの顔を、ラムドン省の公的資料とUSDAの統計から探ります
この記事の要点
- 産地はベトナム中南部ラムドン省ダラット近郊の高原カウダット(標高の範囲は一次資料で未確認)
- ベトナム生産量の約96%はロブスタ種(USDA FAS、2025/26年度推計)だが、ラムドン省の高原ではアラビカも栽培される
- ブルボン・ティピカ・カティモール種を栽培、ダラットでの栽培開始は1930年頃(ラムドン省資料)
- 平均気温約18〜24℃(ラムドン省資料)の冷涼な高原
- 穏やかな酸味とベリー系の香り、ロブスタ主体のベトナムコーヒーとは対照的な味わい
産地情報
| 産地 | ベトナム・ラムドン省ダラット近郊カウダット |
|---|---|
| 品種 | アラビカ種(ブルボン・ティピカ・カティモール) |
| 標高 | ダラット近郊の高原(標高の範囲は一次資料で未確認) |
| 味わい | 穏やかな酸味・ベリー・フローラル・すっきりした後味当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。 |
品種情報
品種:ブルボン種・ティピカ種・カティモール種
フランス植民地期に中部高原で1925年頃、ダラットで1930年頃にコーヒー栽培が始まったとされる(ラムドン省の歴史資料)。カティモールはカトゥーラとチモール・ハイブリッドの交配種で、さび病耐性を持つ(同資料では耐病性品種の導入を1986年としているが、カティモールの導入経路は一次資料で未確認)。ベトナムの主要産地の多くが低標高でロブスタに適する中、ラムドン省には標高の高い高原があり、アラビカも栽培される
- ベトナム生産量の約96%ロブスタ種(USDA FAS、2025/26年度推計)、アラビカは少数派
- ラムドン省・ソンラ省が主なアラビカ産地
- ダラットでの栽培開始1930年頃(ラムドン省資料)
ロブスタ大国のアラビカという矛盾
ベトナムはブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国で、生産量の約96%をロブスタ種が占めます(2025/26年度、米国農務省USDA FAS推計:全体3,170万袋のうちロブスタ3,050万袋)。 中央高地のダクラク省を中心に広がるロブスタ農園が、濃厚な苦味とカフェ・スア・ダ(練乳アイスコーヒー)文化を生んだことは、ベトナム ブオンマトゥオットの記事で紹介した通りです。
しかしベトナムの中にも、アラビカが栽培される高地があります。そのひとつがラムドン省、特にダラット近郊のカウダットです。ラムドン省の資料によると平均気温は約18〜24℃の冷涼な高原です(カウダットの標高の範囲は、資料により値が異なり、一次資料で確認できていません)。北西部のベトナム ソンラもアラビカの産地として知られます。なおラムドン省は2025年7月の行政再編で旧ダクノン省・旧ビントゥアン省と統合され、郡級の行政単位は廃止されました(ベトナム国会決議202/2025)。本記事の地区名は旧来の地名として記しています。国境を越えたインドシナ半島の高地アラビカとしては、火山性土壌のラオス ボラベン高原が近い性格を持ちます。
産地の特徴
代表的な農園
- カウダット産アラビカCau Dat Arabica
玄武岩質の肥沃な土壌と、平均気温約18〜24℃(ラムドン省資料)の冷涼な気候。販売業者(K-Agriculture)はカウダットのアラビカを「ベトナムのアラビカの女王」と紹介している
- ラムドン省 旧ディリン県Di Linh (former district)
ラムドン省の旧ディリン県の産地。標高やアラビカの栽培状況は一次資料で確認できていない
- LIFTプログラム参加農家LIFT (Linking Industry, Farmers, and Traders)
生産者・業界・トレーダーを繋ぐ技術支援プログラムとして紹介されている。実施主体・実施年・参加農家数は一次資料で確認できていない
スターバックスとの関わり
スターバックスの2015年の記事(Starbucks Stories Asia)では、ダラット産のリザーブコーヒーが紹介されています。ただし、商品の形態(限定ロットか定番か)、販売期間、展開国数・店舗数は一次資料で確認できていません。スターバックスの2025年の公式記事で、現行のベトナム単一産地として紹介されているのはソンラ産です。
精製方法
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
カウダットではウォッシュド・ハニー・ナチュラルが併用されますが、甘みを引き出すためウォッシュドとハニープロセスが優先される傾向があります。ウォッシュドでは完熟したコーヒーチェリーを収穫後、果肉を完全に除去して一晩発酵させることで、良好な酸味とチョコレートのような香り、甘い後味を引き出します。
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
シナモン ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃
- 挽き目:中挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ推奨
- 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → ベリー系の穏やかな酸味が際立つ、14g → 甘みとボディが増しバランス重視に)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
目的別に次に読む
- ベトナムのほかの産地と比べたい → ベトナムのコーヒー・ベトナム ソンラ
- アラビカとロブスタの違いを知りたい → アラビカとロブスタの違い
- ウォッシュドで味がどう変わるか知りたい → コーヒーの精製方法ガイド
- アジア・オセアニアの産地を一覧で見たい → アジア・オセアニアの産地
訂正(2026-09-29): ベトナムの生産量に占めるロブスタの割合を「約95%」と記載していましたが、米国農務省(USDA FAS)の2025/26年度推計(全体3,170万袋のうちロブスタ3,050万袋)では約96%のため改めました。カウダットの標高を「1,450〜1,650m」と記載していましたが、ラムドン省の公的資料では約1,600〜1,650mとされるため改めました。気候を「年間を通じて5〜33℃」と記載していましたが、ラムドン省資料の平均気温は約18〜24℃のため改め、「国内で最も評価の高いアラビカ産地」は一次資料で確認できなかったため削除し、「ベトナムのアラビカの女王」は販売業者の呼称と明記しました。「2015年からスターバックスの単一原産地商品」「2016年以降は世界56カ国・21,500店舗以上で展開」と記載していましたが、商品の形態・展開年・国数・店舗数は一次資料で確認できず、スターバックスの2025年の公式記事で現行のベトナム単一産地とされているのはソンラ産のため、2015年の記事で紹介されたことに限定しました。LIFTプログラムの「約100軒の農家」「うち約30軒は女性」は一次資料で確認できなかったため削除しました。「19世紀末のフランス植民地時代に始まる」「カティモールは1980年代にキューバ経由で導入」と記載していましたが、ラムドン省の歴史資料では中部高原で1925年頃、ダラットで1930年頃に栽培が始まり、耐病性品種の導入は1986年とされ、キューバ経由は確認できなかったため改めました。ラムドン省は2025年7月の行政再編で旧ダクノン省・旧ビントゥアン省と統合され郡級が廃止されたため、ディリンを旧県名と明記し、根拠を確認できなかったディリンの標高(1,000〜1,200m)・アラビカ混作と「二大アラビカ産地」の表現を削除しました。あわせて、出典名が「Comunicaffe International」なのにリンク先がDaily Coffee Newsだった表記を、リンク先に合わせて直しました。
訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。
訂正(2026-10-14): カウダットの標高を「約1,600〜1,650m(ラムドン省資料)」とし、説明文・要点・FAQ・基本情報・品種欄・本文・産地の欄で示していましたが、Codexによる一次資料との照合(PR #389)でこの値を確認できず、出典に挙げたページも茶園の歴史を伝える新聞記事の転載で、ほかの報道では約1,500mなど異なる値が示されていたため、標高の値を削除し、標高の範囲は未確認と明記しました。旧ディリン県の欄の「カウダットより低い標高帯に広がる産地」も、両地域の標高を確認できないため削除しました。
訂正(2026-10-16): 副題で「ロブスタ大国が育てる幻の高地アラビカ」と記載していましたが、「幻」は一次資料で確認できない評価の表現で、カウダットの標高も一次資料で確認できていない(2026-10-14の訂正)ため、USDA FASの推計と本文の記述にそろえて「ロブスタが約96%を占める国で、ダラット近郊の高原で栽培されるアラビカ」に改めました。
参考文献・情報ソース
- USDA FAS — Coffee Annual: Vietnam (2026年5月版)
- USDA FAS — Coffee Annual: Vietnam VM2026-0016(ロブスタ3,050万袋/全体3,170万袋)
- ラムドン省 スアンチュオン(Xuân Trường)の行政サイト — 掲載記事「Sở trà đầu tiên của xứ Đông Dương」
- ラムドン省科学技術局 — 科学技術と企業 2024年第5号(平均気温)
- ラムドン省 — ダラット地誌(コーヒー栽培の歴史)
- ベトナム政府 — 国会決議202/2025/QH15(省級行政単位の再編)
- Starbucks Stories Asia — Refresh with Starbucks Autumn Favorites(2025年、ソンラ産)
- Starbucks Stories Asia — Starbucks Vietnam Da Lat Reserve Coffee
- Perfect Daily Grind — A Breakdown of Vietnamese Coffee-Producing Regions
- World Coffee Research — Vietnam Country Profile
- K-Agriculture — Arabica Cau Dat: Vietnamese Arabica Overview
- Daily Coffee News — Vietnam Coffee Report: Record-High Prices Drive Robusta Production
よくある質問
- ベトナムはロブスタばかりではないのですか?
- 生産量の約96%はロブスタ種(USDA FAS、2025/26年度推計)ですが、ラムドン省やソンラ省など一部の高地ではアラビカ種も栽培されています。ラムドン省ダラット近郊の高原カウダットも、アラビカの産地の一つです(標高の範囲は一次資料で確認できていません)
- カウダット産アラビカはどんな味がしますか?
- 穏やかな酸味とベリー系の香り、すっきりした後味が特徴です。ロブスタ主体の濃厚な苦味とは対照的で、ベトナムコーヒーのイメージを覆す繊細さがあります
- ベトナムのアラビカはどこで手に入りますか?
- スペシャルティコーヒー専門店やオンラインショップで「ベトナム ラムドン アラビカ」「カウダット」等の表記で扱われています
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