更新日:

コロンビア バジェ・デル・カウカのコーヒー|スーダン・ルメなど希少品種を試す産地

希少品種の実験場、スーダン・ルメが根付く高地

コロンビア南西部バジェ・デル・カウカは、スーダン・ルメやシドラなど希少品種を試験栽培する農園が集まる実験地帯。カイセドニアに農園を持つカフェ・グランハ・ラ・エスペランサ・グループのスーダン・ルメは、2024年世界バリスタ選手権で5位に入った韓国代表の競技用コーヒーに使われた


この記事の要点

  • コロンビア南西部のバジェ・デル・カウカ県は、スーダン・ルメやシドラなどの希少品種を試験栽培する農園が集まる県
  • FNCが挙げるバジェ・デル・カウカ県産コーヒーの風味プロファイルは、キャラメルの甘さ・サトウキビの蜜・柑橘系の酸・滑らかでクリーミーなボディ・赤い実のノート
  • カイセドニアに農園を持つカフェ・グランハ・ラ・エスペランサ・グループは、1945年にファン・アントニオ・エレーラがポトシ農園でコーヒー栽培を始めたのが起点
  • カリ市ピチンデのラ・インマクラーダ農園はホルギン家が営む60ヘクタールの農園で、標高1,700〜2,200mの区画でスーダン・ルメ・ラウリナ・ゲイシャ・ユーゲニオイデスを栽培する
  • 2024年の世界バリスタ選手権で5位に入った韓国代表ジョンファン・リムは、本人への取材でカフェ・グランハ・ラ・エスペランサのスーダン・ルメを使ったとしている

コロンビアの産地のなかで、希少品種の栽培で名を上げてきた県がある。バジェ・デル・カウカ県──コロンビア南西部、太平洋岸にほど近いこの県には、スーダン・ルメやシドラなどを試験栽培する農園が集まっている。

産地情報

産地コロンビア・バジェ・デル・カウカ県 カイセドニア(Caicedonia)/ピチンデ(Pichindé、カリ市)
品種スーダン・ルメ(Sudan Rume)/ シドラ(Sidra)/ ゲイシャ(Geisha)/ ラウリナ(Laurina)/ ユーゲニオイデス(Eugenioides)
標高1,200〜2,000m(県全体)/1,570〜2,200m(希少品種栽培区画)
味わいジャスミン・柑橘・赤系ベリー・コンコードグレープ・カカオ・ティーライクな余韻当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:スーダン・ルメ(Sudan Rume)

南スーダン・ボマ高原原産の野生アラビカに由来する品種。World Coffee Research(WCR)は、2012年のボマ高原の調査で、この地の野生アラビカに独自の遺伝的多様性が確認されたと紹介している。低収量で栽培が難しく、長らく品種改良の遺伝資源としてのみ扱われてきたが、近年はコロンビアの一部農園が本格的に栽培区画を割き、単一品種のマイクロロットとして国際的な評価を得ている

  • 南スーダン・ボマ高原原産の野生アラビカに由来する品種
  • 2015年(カウカ県産)・2024年(カフェ・グランハ・ラ・エスペランサ)の世界バリスタ選手権で競技用コーヒーに使用
  • ジャスミン・赤系ベリー・カカオの複雑なフレーバー

バジェ・デル・カウカとは

コロンビアの伝統的な「コーヒー生産軸」(エヘ・カフェテロ)はカルダス・キンディオ・リサラルダの3県を指す。だがバジェ・デル・カウカはこの軸の南西に隣接しながら、隣県カウカとはまた別の独自路線を歩んできた県だ。

県北東部のセビージャ(Sevilla、標高1,612m)は、2003年の法律(Ley 817 de 2003)で「コロンビアのコーヒー首都(Capital Cafetera de Colombia)」の呼称が認められた町で、ユネスコ世界遺産「コロンビアのコーヒー文化的景観」の関連地域にも数えられる。この世界遺産の管理委員会には、文化省、Federación Nacional de Cafeteros(FNC、全国コーヒー生産者連合会)、カルダス・キンディオ・リサラルダ・バジェ・デル・カウカ各県の知事などが加わっている。

FNCが挙げる県産コーヒーの風味プロファイルは、キャラメルの甘さ・サトウキビの蜜・柑橘系の酸・滑らかでクリーミーなボディ・赤い実のノート。標高1,200〜2,000mの一般的な栽培帯に加え、県内の一部農園はさらに標高を上げた区画でスーダン・ルメやシドラといった希少品種の試験栽培に力を入れている。

「品種の庭」を持つ二つの農園

バジェ・デル・カウカが希少品種の実験地として知られる理由は、突出した2つの農園グループの存在にある。

ラス・マルガリータス農園(Finca Las Margaritas)は、カイセドニア(Caicedonia)にあるカフェ・グランハ・ラ・エスペランサ・グループの農園のひとつ。標高1,570〜1,850m、平均気温18〜23℃の環境で、3代目のリゴベルト・エレーラ、ルイス・エドゥアルド・エレーラ兄弟が管理する。祖父ファン・アントニオ・エレーラが1945年にポトシ農園でコーヒー栽培を始めたのが同グループの起点で、以来カトゥーラ・コロンビア・タビといった一般品種に加え、ゲイシャ・シドラ・パカマラ・モカ・ラウリナ・サン・フアン(自家交配品種)など「品種の庭」と呼ばれるほど多彩な品種を育ててきた。同グループの農園票によれば、ラス・マルガリータス農園は13区画・合計33.8ヘクタール。

もう一つが、カリ市の集落ピチンデ(Pichindé)にあるラ・インマクラーダ農園(Finca La Inmaculada)だ。ホルギン家が営む60ヘクタールの農園で、うち20ヘクタールは天然林として保全し、残る区画で標高1,700〜2,200mのスーダン・ルメ・ラウリナ・ゲイシャ・ユーゲニオイデスを栽培する。同じ県内の2軒の農園がそれぞれ独立にスーダン・ルメへ投資してきたことが、この土地を「希少品種の実験場」たらしめている。

世界バリスタ選手権の舞台裏

スーダン・ルメが世界のスペシャルティ市場に知られるきっかけを作ったのは、2015年の世界バリスタ選手権(WBC、シアトル大会)だ。オーストラリア代表サシャ・セスティッチは、隣接するカウカ県のフィンカ・サントゥアリオでカミロ・メリサルデが手がけたウォッシュド・カルボニックマセレーションのスーダン・ルメで優勝した。カルボニックマセレーションは元来ワイン醸造(フランス・ボージョレ)の技法で、密閉容器内を二酸化炭素で満たし果実を無酸素状態で発酵させる。セスティッチはワイン生産者ティム・カークとの交流からこの技法をコーヒーに応用し、当時のコーヒー業界に新たな精製の潮流を生んだ。

2024年の世界バリスタ選手権(韓国・釜山大会)では、韓国代表ジョンファン・リムが5位に入った(大会公式の総合順位)。リム本人への取材では、使ったのはカフェ・グランハ・ラ・エスペランサのスーダン・ルメだという。低収量ゆえ長らく品種改良の遺伝資源としてのみ扱われてきたこの品種が、2015年に続いて競技用コーヒーとして世界の舞台に立った形だ。

産地としての立ち位置——品種の多様性

国際コーヒー機関(ICO)がFNCの報告として示すコロンビア全国の生産量は、2024年(暦年)が約1,400万袋(60kg換算)で、2023年の約1,135万袋から23.3%増えた。栽培面積で見た主産地は、ウイラ県(14万5,759ha)・アンティオキア県(11万4,312ha)・トリマ県(10万6,852ha)・カウカ県(9万4,442ha)である。

県 栽培面積 特徴
ウイラ 145,759ha ウイラはピンクブルボンで知られる
アンティオキア 114,312ha アンティオキアは生産量でウイラに次ぐ2位
トリマ 106,852ha トリマはカトゥーラ主体
カウカ 94,442ha カウカはカスティージョ主体、バジェ・デル・カウカとは別県

出典: FNC統計(El Colombiano・agronegocios.co、2024年データ)

パナマのゲイシャやエクアドル・ロハのシドラと同様、希少品種そのものの物語性で評価を得てきた産地といえる。ケニアのSL-28や、原産地である南スーダン・ボマ高原と比べると、コロンビアのスーダン・ルメは投資された栽培技術とカルボニックマセレーションのような精製実験によって、より洗練されたクリーンなカップに仕上がる傾向がある。


代表的な生産者・農園

代表的な農園

  • ラス・マルガリータス農園Finca Las Margaritas (Café Granja La Esperanza)
    📍 コロンビア・バジェ・デル・カウカ県 カイセドニア⛰️ 1,570〜1,850m

    3代目のエレーラ兄弟が管理する「品種の庭」。ゲイシャ・シドラ・パカマラ・モカ・ラウリナ・サン・フアンなど多品種を試験栽培する。同グループの農園票では13区画・合計33.8ヘクタール

  • ラ・インマクラーダ農園Finca La Inmaculada
    📍 コロンビア・バジェ・デル・カウカ県 ピチンデ(カリ市)⛰️ 1,700〜2,200m

    ホルギン家が営む60ヘクタールの農園で、20ヘクタールを天然林として保全。スーダン・ルメ・ラウリナ・ゲイシャ・ユーゲニオイデスといった希少品種に特化し、2012年からスーダン・ルメの栽培を始めた先駆者のひとつ

  • ポトシ農園Finca Potosí (Café Granja La Esperanza)
    📍 コロンビア・バジェ・デル・カウカ県 カイセドニア⛰️ 約1,646m

    1945年、ファン・アントニオ・エレーラが同地でコーヒー栽培を始めたグループ発祥の農園。現在はゲイシャ・シドラ・サン・フアン・カスティージョなどを栽培し、ウォッシュド・ナチュラル・ハニーなど多様な精製の実験拠点も兼ねる


精製方法

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫→
2
果肉除去→
3
水洗い・発酵→
4
乾燥→
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴

グループとしてはウォッシュド・ナチュラル・ハニー(ナチュラルXO・ナチュラル「3ドラゴネス」など独自グレードも含む)と幅広く手がける。なお、スーダン・ルメを世界的に知らしめた2015年WBC優勝ロット(カウカ県フィンカ・サントゥアリオ産)は、ウォッシュドにワイン醸造由来のカルボニックマセレーションを組み合わせたものだった。チェリーを密閉タンクに入れ二酸化炭素環境下で発酵させてから通常の水洗い工程に進むこの手法は、フローラルさを保ちながら果実味の複雑さを底上げする。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づく編集上の目安です。特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。


おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

シナモン ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いコロンビア バジェ・デル・カウカ南スーダン ボマ高原コロンビア ウイラパナマ ゲイシャエクアドル ロハケニア AA SL28

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜91℃(ジャスミンや柑橘系の繊細な香気を飛ばさない範囲)
  • 挽き目:中細挽き(フローラルさと酸の輪郭を両立させる)
  • 抽出方法:ペーパードリップ(クリーンなカップ質感を活かす)/エアロプレス(カルボニックマセレーション由来の複雑な果実味を引き出す)
  • 豆の量:11〜12g / 200ml(香りの繊細さを損なわない濃度)

📏 基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)。本ブログでは下限寄りを推奨
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)。フローラル系の浅煎り豆は、本ブログでは88〜92℃を推奨
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

目的別に次に読む


訂正(2026-09-29): 「世界のバリスタ競技会で二度も決勝の舞台に立った豆」「2015年・2024年の世界バリスタ選手権で採用」と、バジェ・デル・カウカ産が2度使われたように記載していましたが、2015年の優勝者サシャ・セスティッチは本人への取材でカウカ県フィンカ・サントゥアリオ産を使ったと説明しており、誤りだったため冒頭と品種欄の記述を改めました。2024年大会については「韓国代表ジョンファン・リムがラス・マルガリータス農園産ナチュラル精製のスーダン・ルメで決勝進出」と記載していましたが、大会公式の総合順位で確認できたのはリムの5位、本人への取材で確認できたのはカフェ・グランハ・ラ・エスペランサのスーダン・ルメを使ったことで、農園と精製方法は確認できなかったため、確認できた範囲に改め、精製方法の節の2024年ロットの記述を削除しました。ラス・マルガリータス農園の「スーダン・ルメだけで約5ヘクタール」「世界でも突出した栽培規模」は一次資料で確認できなかったため削除し、同グループの農園票で確認できた所在地(カイセドニア)・13区画・合計33.8ha・標高1,570〜1,850mに限定しました。これにあわせて、品種欄の「コロンビアでも栽培面積は数ヘクタール規模にとどまる」も削除しました。スーダン・ルメを「1941年に植物学者A.S.トーマスがボマ高原で記録した野生アラビカの純系遺産品種」と記載していましたが、1941年の記録と「純系」は一次資料で確認できなかったため削除し、World Coffee Researchが紹介する2012年のボマ高原調査(独自の遺伝的多様性を確認)に改めました。「県内39市町村で2万2,000世帯以上…5万1,000ヘクタール超」は一次資料で確認できなかったため削除し、これを前提にした「上位県の3分の1〜半分程度の規模にとどまる」、表のバジェ・デル・カウカの行、「規模で勝負しないぶん」も削除しました。全国の生産量を「1,399万袋…前年の1,138万袋から23.3%増加」と記載していましたが、この2つの数字からは約22.9%増で合わないため、ICOがFNCの報告として示す暦年値(2024年約1,400万袋、2023年約1,135万袋、前年比23.3%増)にそろえ、確認できなかった「直近5年で最高」を削除しました。「4県で全国の54.8%」「フイラ…全国生産の約19%」は一次資料で確認できなかったため削除し、県名の表記を「ウイラ」にそろえました。セビージャを「県都カリに近い」、希少品種の区画を「県南部の一部農園」と記載していましたが、セビージャとカイセドニアはいずれも県北東部で誤りだったため改めました。世界遺産「コーヒー文化的景観」を「カルダス・キンディオ・リサラルダの県知事とFNCが共同管理」と記載していましたが、ユネスコの資料では管理委員会に文化省、FNC、バジェ・デル・カウカを含む4県の知事などが加わっており、記述を改めました。ケニアのSL-28を「スーダン・ルメの遺伝的な近縁」と記載していましたが、World Coffee Researchの品種カタログではSL28は1935年にTanganyika Drought Resistant集団の単木から選抜された品種とされており、スーダン・ルメとの近縁関係は一次資料で確認できなかったため削除しました。

訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。

訂正(2026-10-17): 淹れ方のポイントで「希少品種は過抽出で個性が潰れやすいため下限寄りを推奨」と記載していましたが、これを示す一次資料を記事で挙げていなかったため、「本ブログでは下限寄りを推奨」に改めました。あわせて、お湯の温度で「フローラル系の浅煎り豆は88〜92℃が香気を保ちやすい」と記載していましたが、湯温と香りの関係を示す一次資料を記事で挙げていなかったため、「フローラル系の浅煎り豆は、本ブログでは88〜92℃を推奨」に改めました。

コメント

コメントを書く

閲覧数 読み込み中

最新情報をフォロー

各SNSでも記事・動画を発信しています